伊勢新聞

2019年1月29日(火)

▼世論というのは移ろいやすい。痛感したのは先のNHKの世論調査。北方四島返還交渉で、歯舞・色丹2島の返還を前提とした日ロ平和条約締結について、賛成が反対を上回ったことだ。橋本政権で2島返還で進んだころとは、領土への認識が明らかに違う

▼国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退も「評価」と「ある程度評価」で50%を超えた。国際連盟脱退とはむろん性格は違うが、連想する世代が少数派になったのも確かなのではないか。国際協調を国是とした当時とは、国際協調の考え方も変化が起きているのかもしれない

▼統合型リゾート施設(IR)に6割の自治体が冷めた視線という全国調査はどうか。実施法提案前は多くの自治体が熱視線などの報道もあった。大阪、愛知、和歌山など近隣府県が名乗りを上げ、名古屋市長が県での誘致まで言及する。外堀を埋められていく感もあったが、遠くの火事は大きく見えるということだったか

▼木曽岬干拓地を工業用地として売りに出したことを発表した先の知事会見でも、IRの動きが問われている。鈴木英敬知事は、名古屋からの連絡はないと否定した。河村たかし市長からの電話は10月の1回だけということだろう。工業用が条件であり、2月の募集開始を前に問い合わせが複数ある中で、IR事業者は「今は無い」

▼東南アジアのカジノを見学した知人がいた。すぐ裏に断崖があるそうだ。「破滅したら飛び込むということか。うまくできている」と笑っていた。依存症、治安悪化、青少年への影響なども含め人心の荒廃が確実に進むということでもあろう。