伊勢新聞

2019年1月16日(水)

▼不祥事や事務処理ミスの多発を受け、有識者でつくる県のコンプライアンス懇話会が始まった。内部で作成した再発防止策の中間案に委員から注文が相次ぎ、対策に優先順位をつけるよう求められたという。数の多さに圧倒されたか、中間案などと、すでに方向が決められている会議の運営に戸惑ったか

▼中間案は、職員の意識向上▽支え合う職場作り▽処分の厳格化―など。「ポイントが外れている可能性もある」と嶋田宜浩総務部長が紹介したのはこれまで何度も議論してきたことをすべて網羅し、しかし効果がなく、悪くなっているとさえ思えるからだろう

▼「これだけやるのは大変」「どうすることもできないのでは」とそのボリュームに委員は驚いたようだが、なに、そのつど何度も周知してきたことをまとめただけに違いない。「意識向上」は北川県政が第一に掲げ、日本能率協会に委託し、幹部から一般職員まで、一年がかりで研修し〝成果がでた〟とされたことである

▼きっかけはカラ出張問題だが、食糧費への監視が厳しくなって多用されるようになった手法である。野呂県政で繰り返されたのは経理の不適正処理。余った国の補助金の返還手続きが煩雑で、国の印象も悪くなるため全額使ったことにした

▼委員が指摘した鳥羽港の改修を巡る公文書改ざん問題もそんな処理をして発覚を恐れ、文書改ざんまでしてのけた。いずれも底流ではつながっている。県の分類がすでにポイントがずれている可能性は大きい。再発防止策策定も、徹底解明にフタをする役割を果たしてきたことが少なくないのである。