伊勢新聞

2019年1月13日(日)

▼「猫にかつお節」は、誘惑にかられて間違いを起こしやすいたとえ。あるいは危険な状況にあることを指すが、江戸時代の戯画にはかつお節をくわえた人々が猫を取り囲み「そりゃとったわ」「はなさぬか」などとはやしたて、頭をたたく絵が描かれている。猫も油断できない

▼先日スーパーで万引して逮捕された県立高校教員が「これぐらいなら分からないと思った」と供述したが、今度は出張旅費を不正受給した県立かがやき特別支援学校校長が「これぐらいなら良いと思った」。県の教員は人格的に壊れてしまったか

▼ばれるか、ばれないか、見られているかどうかで行動する。そういう人にとって、旅費が実費精算ではなく、領収書もいらない申告制だということは、かつお節を目の前に置かれたようなものだろう。以前も校長ら3人が1台の車に便乗してそれぞれ旅費を請求したことがあった。まずばれないはずが、見ている学校関係者がいて、通報で「そりゃとった、はなさぬか」とはやしたてられることになった

▼おカネに目がない頭の黒いネズミならぬ〝ネコ〟ばかりの世の中になった。鼻先にかつお節をぶらさげておくような仕組みは、まことに罪つくりと言わなければなるまい。かがやき特別支援学校は一昨年4月に発足し同6月に開設した県立子ども心身発達医療センター内に分校が併設されている。同センターは鈴木英敬知事が就任一年目に設立を決めた「思い入れのある施設」で、開設記念式典では同学校と「一体で運営されている」と胸を張った

▼初代校長の不祥事に、舌打ちしたい思いだろう。