伊勢新聞

2019年1月11日(金)

▼教師の世間知らずとはよく聞く言葉だが、50歳の県立高校教員である。スーパーで万引し「これぐらいなら分からないと思った」と供述したという。ムムムムッと絶句させられる

▼むろん「これぐらい」の問題ではないが、万引したのは餅1袋や弁当、海鮮丼など10点で販売価格合計は2282円。なかなかのボリュームである。そっくりビニール袋に入れて店外に出たらしい。悪びれたところが感じられず、堂々たる振る舞い。本人が「これぐらい」と思っていたことは間違いなさそうで、世間知らずの域を抜けている

▼万引犯が捕らえられる現場に居合わせたことがある。地味な主婦という感じの女性だったが、百貨店の裏通りで追いかけてきた警備員2人に両腕を捕まれたのだが、わっと叫び声を上げて道路に突っ伏した。この後、その女性を待っているであろう場面を想像して、ぞっとしたものである

▼亀山市指定文化財の修理工事を巡って競争入札を不正に仕切った上に20万円の謝礼を受け取った元市文化振興局長もそうだが、懲戒処分を受けては名誉だけではなく、退職金もふいにしてしまうという想像力が働かなかったのか。64歳という年齢から、あるいは再雇用かもしれないが、県立高教員は50歳。確実に退職金を失うことになろう。もったいない話だが、これも、そういう問題ではない

▼県教育長がまた会見で陳謝することになるのだろう。昨年は障害者雇用率やブロック塀点検など行政関係だけでなく、教員の交通事故が相次いだ。年明け早々の窃盗事件。不祥事の連鎖が止まらない。