伊勢新聞

2019年1月7日(月)

▼レーダー照射問題で、韓国各紙が大々的に報道を始めた。照射を否定する韓国政府の動画を「安倍(晋三首相)の挑発に反撃」などと、政府の援護射撃ぶりは日本の新聞と同じだが、水面下で調整すべき問題を正面きって打ち出した日本側を批判するとともに「韓国側が対抗作戦に出ていることも憂慮される」

▼政府の主張のままに報じている日本とはひと味違う。日本の主権が侵害されたにもかかわらず、金大中事件は韓国ロビーなどと言われた自民党の政治家らが日韓を往復し瞬く間に政治決着してしまった

▼河野太郎外相は、記者会見でロシアとの平和条約交渉についての質問を四回続けて無視した。外交問題は途中で明らかにできないことがあるということだ。照射問題の防衛省の態度は、拙劣過ぎることになる

▼河野太郎外相はまた、同じ無視をするにも「次の質問をどうぞ」を連発するのではなく「『お答えは差し控えます』と答えるべきでした」と謝罪した。交渉ごとのプロとしてまことに心もとない。外交の底力が確実に低下している

▼米中ロという東アジアの安全保障に強い影響力のある大国との関係がかつてないほど不安定になっている。北方領土交渉を前に辺野古への土砂投入を強行しプーチン大統領の不信を増幅した。国際捕鯨委員会(IWC)脱退は日米同盟と国際協調という日本の立ち位置を弱める。特に米韓とともに連携が重要なオーストラリアとの関係が心配される

▼照射問題を「国内政治に利用しようとする」と韓国紙。北方領土問題はむろん、IWC脱退も、国内政治利用の気配は濃い。