三重県鈴鹿市稲生塩屋1丁目の住宅駐車場に停めてあった軽ワンボックス車内で5月、この家に住む解体作業員横山麗輝さん=当時(25)=が遺体で発見された事件。当初は自殺の可能性も指摘されたが、解剖結果から他殺の可能性が強まり、県警は殺人事件と断定して捜査本部を設置。約3カ月後に殺人容疑で逮捕されたのは、麗輝さんの妻とその交際相手の男だった。
事件は、5月13日午前5時55分ごろ、麗輝さんと同い年で、義理の息子に当たる男性からの110番により発覚した。
男性からの通報を受け、現場に駆けつけた鈴鹿署の捜査員が、車の後部座席で首に延長コードを巻いた状態で倒れている麗輝さんを発見した。司法解剖の結果、死因は頸部圧迫による窒息死と判明。首に残った痕から凶器は現場で見つかった延長コードとみて矛盾はなく、抵抗した際に残るひっかき傷が首の周りに残っていたこと、顔や手足に複数の傷が確認されたことなどから殺人事件と断定され、同月14日付で鈴鹿署に捜査本部が設置された。
事件発生から約2カ月後の7月24日、県警は死体遺棄容疑で麗輝さんの妻の横山富士子容疑者(46)とその交際相手の上山真生容疑者(29)を死体遺棄容疑=嫌疑不十分で不起訴=で逮捕。8月15日に2人を殺人容疑で再逮捕し、津地検は9月5日付で2人を暴行と殺人の罪で起訴した。
また富士子被告の実母(69)も犯行に加担したとして、殺人未遂容疑で逮捕=暴行罪を認定して嫌疑不十分で不起訴=された。
起訴状などによると、2人は共謀して麗輝さんの殺害を企て、13日午前0時15分ごろ、麗輝さんの自宅で上山被告が麗輝さんの首を絞めるなど暴行。その後、同4時5分―39分ごろまでの間、富士子被告が経営するスナック「MOmo」(鈴鹿市道伯町)内で上山被告が麗輝さんの首を延長コードで絞めて殺害したとしている。
自宅や富士子被告が経営する店内から麗輝さんの物とみられる血痕が発見されたほか、上山被告とみられる人物が麗輝さんとみられる大きな荷物を車に運び入れ、走り去る様子などが店周辺の防犯カメラに残されていたことなどが逮捕の決め手になったとみられる。
また捜査では、麗輝さんの遺体から睡眠導入剤の成分が検出されたことや、2人が犯行前に無料通信アプリLINE(ライン)を通じて殺意をほのめかすやり取りをしていたこと、富士子被告が自身を受取人とする麗輝さんの生命保険の保険金額を増額していたことなども明らかとなった。
捜査関係者によると、上山被告は富士子被告の店に客として来店したのをきっかけに、短い期間から交際に発展したとみられる。富士子被告の証言は事件発生当初から不可解な部分が多く、早い段階から捜査線上には浮上していたという。
2人の認否は明らかにされていないが、捜査関係者は2人の恋愛や離婚を巡るトラブルから富士子被告が主導的立場で犯行を計画したとみている。恋愛のもつれから、実母をも巻き込んだ異常とも言える事件はどのような解決を見るのか。