伊勢新聞

2018年12月30日(日)

▼今夏の台風20号で、また兵庫で風車が倒壊。今度は根こそぎ倒れたようだが、平成25年に京都府とともにプロペラが吹っ飛んで青山高原に深い爪痕を残したシーテックは「写真を見る限り、基礎の規模が大きく異なる」と、自社製の安全を強調した

▼事故から5年の無事故期間が安全宣言をためらわせなかったのだろうが、たった1枚のプロペラが広い範囲の木々をなぎ倒した恐ろしい写真の記憶は5年程度では頭から消えない。何より事故原因がはっきりしないことが不安をあおる。自社の調査結果は公表したが、一定の風速以上で停止するはずが再び稼働して過運転になった理由はなにか

▼軸の歯車が全19基の半分は鋼鉄製同士でかみ合わせているのに、事故基を含めて残り半分が鋼鉄とアルミの組み合わせだったのはなぜか。アルミの歯車が摩耗していたのは事故基だけか。表向きの性能を額面通り信じ切れないのは、説明のないまますべて合金に変えてしまった、後処理にある

▼自然エネルギー〝応援団〟の鈴木英敬知事が環境影響評価法に基づく知事意見で一転「自然環境を犠牲にしても必要か」と同社計画に懸念を表明したのも、事故の記憶を見据えてのことだろう。今度は松阪市での事業で、竹上真人市長が反対意見を知事に提出した

▼現地の地盤が不安定で土砂災害の恐れが強いことも指摘している。太陽光発電を巡っては、志摩市が土砂災害などもあげて歯止めの条例を制定して全面対決の構え。県も再生エネ事業をあおるだけでなく、自然環境にマッチした計画へ見直すのは、太陽光だけではない。