こんにちは! 12月上旬から2週間にわたって開催されていた気候変動に関する国際会議(COP24)が先日やっと終了しました。「COP特集」最後となる今回は会議最大の見せ場の一つ、各国演説についてご報告させていただきます。
気候変動対策の成否はひとえに各国の政治的決断にかかっているといっても過言ではありません。COPにおいて、その意気込みを示す場が各国演説です。何と170を超える国や国際機関などが延べ3日間にわたって演説を行います。どの国もこの5分程度の演説の中に、自国の対策、成果や途上国支援など思いの丈を詰め込み、国際社会にアピールします。また世界中の関係者は、その一言一句を聞き漏らすまいと注目します。
今回、「地球の片肺」を有するコンゴ民主共和国からは私の上司である環境省次官がこの演説に挑みました。彼は一体どんな演説をするのか、そして着任後わずか一カ月足らずの私が演説案の作成にどのように関わっていけるのか…私の心中は正直穏やかではありませんでした。
こうした状況で政策アドバイザーであることをかさに着て「チェックするから演説案を見せてほしい」などと単刀直入に話を持ち掛けることは決して賢明なやり方ではありません。彼らの方から演説案への意見を求められ、それに応える…それが私が理想とするシナリオでした。
一体どうすれば、そのことを実現できるのか…考え抜いた揚げ句、ホテルや食事の手配、会議資料の入手から記念写真の撮影まで日本人が得意とする「気遣い」を前面に出した支援を行いました。
そして数日後…小さな奇跡が起きました。何と次官に指示された担当者が私に演説案へのコメントを求めてきたのです。私は万歳したい気持ちを抑え、担当者に私が考える演説のポイントを説明しました。
そして、とうとうコンゴ政府の演説の日がやってきました。少し緊張した面持ちで次官が壇上に向かいます。私はというと、会場の最前列に陣取り、カメラを構えました。まるで自分が演説するときのような緊張感―。
そして次官は私が期待した通り、コンゴ政府として熱帯林の保全にしっかりと取り組んでいく旨の演説を行ってくれました。それは私の心の中で派遣国である「コンゴ民主共和国」が私の母国「日本」に取って代わった瞬間でもありました。
帰国後、いろいろと世話になったことへのお礼を述べる私に次官がひと言「お前はわれわれのメンバーの一員だ」と言ってくれました。
【略歴】おおなか・こうさく 昭和49年生まれ、伊勢市出身、三重高校卒。平成11年農林水産省林野庁入庁。北海道森林管理局、在ケニア大使館、マラウイ共和国環境・天然資源省、林野庁海外林業協力室などを経て、平成30年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザーとしてコンゴ民主共和国環境省に勤務。アフリカ勤務は3カ国8年目。