三重県三重郡朝日町で平成25年8月、帰宅途中の中学3年生の女子生徒=当時(15)=が当時高校3年生の元少年(23)=犯行時(18)=に襲われて死亡した事件。発生から5年近くが経過した今年5月、被害者の遺族が元少年の両親に対し、監督義務違反を訴えて3200万円の損害賠償を求めていた民事裁判の和解が津地裁四日市支部で成立した。遺族の悲痛な叫びをきっかけに、県は犯罪被害者支援制度整備に向けて動き出した。
25年8月25日夜、花火大会から帰宅途中の女子生徒が朝日町埋縄の路上で襲われ、空き地で暴行を受けて亡くなった事件。女子生徒を窒息死させたとして強制わいせつ致死の罪に問われた元少年は27年10月、懲役5年以上9年以下の不定期刑が確定し、刑務所に服役している。
被害者の遺族は損害賠償命令制度に基づき元少年に慰謝料など約1億円の損害賠償を求める訴えを起こし、津地裁は27年6月、元少年に7700万円の賠償を命じる判決を下した。
元少年だけでは支払い能力に限界があることから、被害者遺族は同年10月、問題行動を把握しながら適切な指導監督をしなかった監督義務違反として、元少年の遺族に対しても3200万円の損害賠償を求めて津地裁四日市支部に提訴。元少年の両親が請求額の一部を分割で支払うことに同意したため、5月24日付で和解が成立した。
和解成立後の6月、四日市市内で会見した女子生徒の父親は、未整備の犯罪被害者支援条例制定を求めて、鈴木英敬知事宛てに五枚つづりの直筆の手紙を送ったことを明らかにした。
父親は「被害者は泣き寝入りを強いられている。これからも犯罪はなくならない。それなら法整備をしっかりしないといけない。つらい思いをした被害者の遺族の気持ちが少しでも和らぐよう一日も早く支援条例の制定を」と窮状を訴えた。
これを受けて鈴木知事は県庁で開いたぶら下がり会見で、「手紙を重く受け止め、条例の制定について検討する」として条例制定を急ぐ考えを打ち出した。
県は12月10日に開いた県議会環境生活農林水産常任委員会で、犯罪被害者支援条例(仮称)の中間案を示した。中間案では、条例を三章24条で構成し、被害者や遺族側の経済的負担軽減として犯罪被害者等給付金法に沿った見舞金の導入などが盛り込まれる見込みとなった。
県は来年の県議会2月定例月会議に条例案を上程し、4月の施行を目標に現在、1月11日まで一般からのパブリックコメントを募集している。県くらし・交通安全課くらし安全班の担当者は「一件でも多く意見を募集している」と呼び掛けている。