伊勢新聞

2018年12月29日(土)

▼三重県亀山市の文化財工事巡る汚職事件の裁判で、加重収賄罪に問われた元市生活文化部次長は起訴内容を認めながらも、宮大工男性から渡された現金20万円を一度は断ったが謝礼と認識して受け取ったと説明したという。賄賂を受けたつもりはなかったということか。文化財保護に誠実に従事してきた市の第一人者としてのプライドが言わせたともいえようか

▼賄賂か謝礼かで、量刑が変わるとも思えない。加重収賄罪は職務に関し不正行為があった場合に成立する。入札後に宮大工側に金額の差し替えを指示したのは明確な不正で、現金の受け取りが事前か事後かは関係ないからだ

▼ただ歳暮などの謝礼が賄賂かどうかで争われた昭和50年の最高裁判決はある。授業以外に特別指導をしていた教育熱心な中学校教師が複数の保護者から1万円程度の商品券を贈られたケースを慣行的社交儀礼の余地が十分あると判示した

▼歳暮などの賄賂性は定着しているが、社交儀礼として認められる場合もあるということであり、金額の多寡で分かれると説く法律家もいる。元市次長の「謝礼発言」は、この判例を意識したものかどうか

▼亀山市の汚職事件は、収賄罪が成立する請託などがあったようではない。最も信頼する業者への発注ができなくなった入札結果への戸惑いが発端。入札を提案した文化財保護事業第一人者としての困惑と責任感の表れとも言える

▼文化財修理事業が入札になじんだのかどうか。櫻井義之市長が改善策として発表した入札執行支援の検討や財務課職員の立ち会いが、果たして「改善」と言えるかどうか。