<1年を振り返って>県RDF事業終了決定 爆発事故や市町負担増

【17年の歴史に幕を閉じるRDF発電所=桑名市多度町力尾で】

三重県が14市町・団体を巻き込んだ17年間の一大事業、RDF(ごみ固形燃料)焼却発電は来年9月に終了する。未利用エネルギーの活用や有害物質のダイオキシン対策を目的に始まった事業は、県の想定の甘さなどから貯蔵庫の爆発事故や市町の負担増を招いた。県や参加市町は果たして事業が失敗した責任の所在を明確にできるのか。

RDF焼却事業に参加する市町や団体でつくるRDF運営協議会は今年7月19日、事業の終了時期の一年半前倒しを決めた。32年度に終了する予定だったが、桑名市などでつくる桑名広域清掃事業組合が来年9月でRDFの搬入を停止すると表明。伊賀市も同調した。両団体の撤退でRDFの搬入量が大幅に低下するため安定的な運転は困難と判断した。

RDF発電所は北川正恭知事時代の14年12月に稼働。当時はダイオキシンが問題となり、市町では対策が難しかった。RDFは問題を解決すると同時に、家庭ごみがエネルギーに生まれ変わる「夢のような事業」(参加団体)だった。

ところが、稼働した15年8月に施設内にあるRDF貯蔵庫で火災が発生。消火作業中に爆発し、2人の消防士が死亡。5人の作業員が重軽傷を負った。不良なRDFの搬入や貯蔵槽の防火対策の不備が原因とされ、県の想定の甘さが露呈した。

また、当初無償だった処理委託料は有償になり、段階的に引き上げられた。平成14年から18年は1トン約3610円だったが、29年度には1万4145円まで増えた。売電収入が減少したためで、県の見通しの甘さが出た。

伊賀市は「当初は考えられなかった費用がかかった。負担金がかなりの額だったため市の予算を圧迫していた」と説明。来年9月から新しいごみ処理施設で試験運用する桑名広域清掃事業組合は新しい施設のほうが安いと見込む。

県は来年度に撤去を進める設計委託費を計上する予定だ。撤去は少なくとも33年度までかかる見通し。企業庁は事業全体の総括に入るのは34年度以降になるとみている。

県議会9月定例月会議で鈴木英敬知事は爆発事故で2人が死亡したことを「痛恨の極み」としながらも、事業全体は「功罪相半ば」と総括。この表現に「罪のほうが大きい」と指摘する議員もいた。

県は爆発事故の民事訴訟が終結した28年度に一度、事業を総括している。廃棄物の未利用エネルギーの活用やダイオキシン対策を成果に挙げた一方、人命が失われたことや県の収支見込みの甘さを認めた。事業終了後の総括には「環境生活部や参加市町・団体からの意見を取り入れる」としている。

建設費や運営費に多額の税金を投じたRDF焼却事業。同じ失敗を繰り返さないために厳しい検証が必要となる。