伊勢新聞

2018年12月28日(金)

▼鈴木英敬知事の今年の漢字一文字は「生」だった。「高校生が生き生きと活躍したことが一番大きい」とは、全国高校総体の県内開催のことだろう。「共生社会への課題も含めている」とは、障害者雇用率の算定誤りや亀山市のシャープ亀山工場の外国人労働者雇い止め。明と暗である

▼ほかにも「生命の危機を感じる災害頻発」「松浦武四郎生誕200年」で、明と暗がそれぞれ2つずつ。バランスをとったということでもあろうが、高校総体開催が全国持ち回りで、生誕も決められた節目であるのに対し、「共生社会への課題」の障害者雇用率や労働者雇い止め問題は、行政の質が問われる。「災害の頻発」は、まさに知事が自身の使命とする防災に関わる。際だった成果としてではなく、反省の対象として掲げなければならないことには、じくじたる思いもあるのではないか

▼国体の正式決定や東京オリパラのキャンプ地誘致が「スポーツの成果」かどうか。東芝メモリ四日市工場の新棟完成が「企業立地の進展」になるのかも、東芝メモリの曲折ぶりからして、違和感はある

▼「ブロック塀対策」は「相次ぐ災害」というより、法定点検をしていなかった県有214施設とともに「相次ぐ不祥事、不適切な事務処理」に分類すべきではないのか。「専門業者からの指摘がなかった」という知事と「細かい指示は出してなかった。こちらの側の認識が甘かった」という教育長の説明とでは明らかに食い違う。問題の所在さえ把握していないのではないかという疑念さえ抱かせる

▼明と暗織り交ぜながら今年も暮れていく。