伊勢新聞

<1年を振り返って>高校野球 三重、49年ぶり4強 白山、初の甲子園に沸く

【甲子園までの戦いぶりに感動したという県内企業が寄贈した投球マシーンを試運転する白山ナイン=19日、津市南家城の同校で】

三重の球児が2季連続で甲子園を盛り上げた1年だった。3月から4月にかけて開催の第90回記念選抜高校野球大会で、東海地区代表として出場した三重高校(松阪市)が49年ぶりのベスト4進出。8月の第100回全国高校野球選手権大会では、ノーシードから県代表の座をつかんだ白山高校(津市)のさわやかな戦いぶりが県内外の高校野球ファンの心をつかんだ。


三重は昨年秋の東海地区大会で決勝に進めなかった。主戦の定本拓真主将ら能力の高い選手は擁していたが全国大会の実績がないため前評判は高くなかった。それでも今年の選抜大会が90回の記念大会で、出場校が例年より4校多い36校のため、東海地区第3代表で滑り込むと、4年ぶり13回目の春の甲子園で快進撃を続けた。

平成生まれの小島紳監督のバントを使わず、強攻策で押し切る「イケイケ野球」で日大三、星稜などの有名校を次々と破った。準決勝では大阪桐蔭と延長12回の末、2―3でサヨナラ負けして決勝には進めなかったが、この夏、史上初となる2度目の春夏連覇を果たした強豪をあと一歩まで追い詰めた。


初戦敗退ながら、強豪校に負けない輝きを放ったのが夏の甲子園の白山だ。春夏通じて初の甲子園。上野高時代、県大会ベスト4の指導実績がある東拓司教諭の野球部監督就任後、野球経験のある部員が集まるようになり、10年連続県予選初戦敗退から徐々に力をつけてきた。

グラウンドは草だらけ。投球マシンもなし。練習環境に恵まれない中からスタートしたノーシードの公立校が苦労の末、甲子園出場を決めるまでのドラマは、新聞やテレビ報道、SNSなどを通じて広まり、全国的な反響を呼んだ。全国高校総体で来県した皇太子殿下も話題にしたほど。学校が甲子園に向けて用意した約4千個の応援セットは完売。愛工大名電(愛知県)に完敗した2回戦も、応援スタンドは地元住民を含めた約2千人で埋め尽くされた。


今年夏の県予選決勝は、白山と松阪商のノーシードの公立校同士の対戦となった。シード校は決勝までにすべて姿を消し、春夏連続甲子園出場を目指していた三重も1回戦で松阪商に敗れていた。連覇の難しさを改めて感じた1年でもあった。

来年1月には第91回選抜高校野球大会出場校を決める選考委員会がある。県関係では10月の東海地区秋季選手権準優勝の津田学園(桑名市)などが候補となっている。今年、無限の可能性を見せた三重の球児ら。来年はどんなドラマで沸かせてくれるだろうか。