伊勢新聞

<1年を振り返って>早期発見で適切支援 鈴鹿市・5歳児集団適応健診

【集団適応検診を受ける園児ら=鈴鹿市内で】

三重県鈴鹿市は今年、市内の満5歳になる全幼児、約1700人を対象にした集団適応健診を始めた。市が進める「途切れのない支援」に向けた取り組みの一環。来年度からの本格実施を前に新たな課題が見えてきた。

健診を通じて、子どもの集団生活へのなじみにくさの早期発見と支援につなげ、円滑な小学校入学を目指す。

モデル事業の初年度となる平成28年度は64人を対象に実施し、そのうち要支援は7人。入学した後、不登校になったり、学級崩壊の中心になる児童は1人もいないという。子ども家庭支援課の佐野仁美課長は「早い段階からの適切な対応で改善されていく可能性が高い」と話す。

今年の健診は5月24日から12月18日まで実施。個別健診と集団検診があり、友人とのコミュニケーションや運動を通じ、人と関わる力や話を聞く力など発達を確認する。公立、市立幼稚園と保育所、認定子ども園のほか、認可外園児や市外園児、在宅児、外国籍児も対象になる。

10月末現在の実施件数は1214人で、受診率は95・4%。現在までの判定結果は要支援が10・9%、既支援が6・3%で国や県の割合とほぼ同程度。

市立算所保育所(119人)では11月下旬、対象となる26人に検査を実施した。今村揮代美所長は「これまでは担任が個々に支援してきたが、たくさんの人が関わり、いろんな視点で検査することで気づくこともある」と話す。

今村所長は「子どものつまずきに共感することが大切。保育士がそれぞれの苦手な部分の原因を探り、やりやすい工夫や環境を作ることで、子どもたちの成功体験や達成感を積み重ねていく」と話す。

集中力がなく姿勢を保持できない子どもには足元に足型に貼ったテープを置き、位置をはっきりさせ安心感を持たせたり、遊びの中に「だるまさんが転んだ」を取り入れ、静と動の動きを意識できるように仕向ける。「ちょっとした支援で集中できる」と今村所長。

健診結果が要支援の場合は全員の保護者、既支援の場合は希望する保護者に面談で結果を伝える。保護者の心配を聞き、発達検査や相談につなげる中で、約八割から「健診がスムーズな就学に有効」との回答を得た。

一方、結果を聞いた保護者が落ち込んだり、拒否する場合もあり、伝え方が課題となっている。

要支援児の増加に伴い、廃園になった牧田保育園を改修し、来年10月から児童発達支援センターの役割を担う「第二療育センター」として活用する計画を進めている。

佐野課長は「学校との連携など情報共有とさらなるフォロー体制づくりの充実に取り組んでいく」と話した。