【津】三重県津市の大門大通り商店街の象徴として親しまれてきたアーケードが6月に撤去された。台風12号などの襲来で市内に被害が発生したことから「台風が来る前に撤去しておいて良かった」と安心する声が広がる一方で「今までよりさらにガランとしているのが分かるようになった」と客足のさみしさを心配する声も。撤去から半年が経過し、長年続く集客への課題が浮き彫りになっている。
アーケードは大門大通り商店街振興組合が昭和39年に国の補助金などを活用して建造。南北に約240メートル、東西に約90メートルあった。老朽化が進み、震度5強の地震で倒壊する可能性が指摘されたため、組合が平成27年5月の総会で解体を決めた。
撤去が決まってから解体までに3年かかったのは費用の捻出に難航したためだ。撤去費に1500万円が必要で、さらに撤去後はアーケードの明かりがなくなるため街灯の設置費780万円がかかった。約2280万円の費用は組合だけでは賄い切れなかった。
組合が市に頼ると、市は当初難色を示した。建造費を補助する事例はあっても、解体費を補助する事例はなかったからだ。地元の市議らが撤去費の補助のために動き、最終的に市側が折れて撤去費の27%に当たる約615万円を捻出することになった。
解体工事は大型連休明けの5月7日に開始。アーケードと一緒に通り沿いに設置されていたモニュメントも100万円をかけて撤去し、6月末に完了した。フェニックス通りから津観音まで覆っていたアーケードがなくなり、昼間から薄暗かった商店街に一転、青空が広がった。
「見通しが良くなった」と喜ぶ店主らもいる。一方で「覆うものがないので暑さを感じるようになった」とアーケードの良さを思い知らされることになった。来店客からは「ガランとしているのが目立つ」「目印のアーケードがないので道に迷った」と、否定的な声も少なくないという。
ただ、7―9月に猛威をふるったは台風の際は、別の商店街アーケードの一部が落下する被害が発生。「台風が来る前に撤去しておいて良かった」と安堵(あんど)が広がった。
景色が様変わりした商店街で、最大の課題は長年続く集客の落ち込みだ。市役所が移転し、ダイエー津店が撤退して以来、衰退の一途をたどっている。組合が活気を取り戻そうと試行錯誤を繰り返しているが、抜本的な解決には至っていない。
組合は集客効果を狙って、昨年9月から「健康づくりウォーキング」を企画。大門周辺を歩いた人にコースに応じて商店街の店舗で使えるポイントを付与している。組合によると、今年12月初旬までに延べ約3800人がウオーキングで商店街を訪れた。
とはいえ、商店街は訪れるだけでなく、買ってもらわなければ意味がない。各店の収益を上げる対策が急務だ。さらに、市はこれまで商店街内のだいたて駐車場の駐車料金を1時間無料にするため年間300万円ほどを組合に補助金支出してきたが、来年度以降は補助金を打ち切る方針を示している。
組合の山田和弘理事長は「商店街を心と体がリフレッシュできる場にするとともに、個々の店舗の魅力を高めたい」と再生への決意を強調。市からの補助金打ち切りに対応するため、駐車料金の改定を検討するなど次の一手を模索している。
新たな景色に生まれ変わった大門大通り商店街。店主らは「にぎやかな大門に戻ってほしい」と願うが、活性化への具体的な道筋を付けられるかが問われている。