伊勢新聞

2018年12月17日(月)

▼女子が男子よりも精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高い傾向にあるが、入学後はその差が解消されるため補正が必要、と女性受験者を不利益取扱いにしていた順天堂大学が言った。医学的にも検証されていると学術論文も示したというから、イグノーベル賞に推薦されなかったことが惜しまれる

▼大阪の〝おばゃん〟のボケ、ツッコミの巧みさには定評がある。眼科に1週間入院し、同部屋の患者の妻たちがたちまち親しくなるコミュニケーション能力に感嘆したことがある。女性のコミュ力は大学在学期間中だけ劣化するということか。「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」というイグノーベル賞でぜひ審査してもらいたかった

▼共同通信の加盟社校閲・用語責任者会議で、講演した関東学院大学の中村桃子教授(言語学)が翻訳小説で実社会ではほとんど消えた女言葉が過剰に使われていることについて、翻訳者は使わないと日本の読者は違和感を持つ気がして使うのだと解説したという

▼結果、日本以上に男女差のない国の女性言葉にも日本の「女らしさ」が共有されていくことになる。「私作る人、僕食べる人」のCMが性差で役割分担を助長すると批判されて43年。「まあ、あんまりうまくいかなかったわね」(ハリーポッターと賢者の石)などの会話が「自然な女性言葉」として社会に浸透している

▼面接に臨む女性の言葉はどうか。絶滅した女性言葉と普段の会話との落差が「男性のコミュ力認識に及ぼす考察」を研究すればイグノーベル賞受賞間違いなしかもしれない。