伊勢新聞

<1年を振り返って>鈴鹿の移住定住化施策 若者の就職に補助金

【4月から配布を始めた移住、定住促進パンフレット「鈴鹿暮らし」=鈴鹿市役所で】

三重県鈴鹿市の人口は10年間で約4500人減り、減少率2・2%。2045年には4万人以上減少し15万6000人程度と見込まれる。市は移住促進など人口減少抑止策に取り組んだ。

若い労働力の確保と定着は人口増につながる。4月から企業版ふるさと納税を活用し、市独自の「若年者ふるさと就職支援補助金」の受け付けを始めた。

補助金は市外からの移住を伴う40歳未満の若年労働者を新規に雇用した製造業、建設業の市内中小企業に対し、20万円を上限とする移住費用を支援する。初年度の事業費は200万円。

市は市外から市内ものづくり企業への就職者数を年間10人とする数値目標を掲げているが、昨年度は3人にとどまった。転居費用など金銭的負担が伸び悩みの要因とみて、補助金の創設を決めたが現在のところ、申請件数は1件にとどまる。岡本隆典産業政策課長は「ものづくり企業は人手不足が顕著なため、売り手市場で都市部の企業を選ぶ人が多いのでは」と分析する。

住宅金融支援機構(東京都文教区)と4月13日、「移住促進のための空き屋リノベーション補助金相互協力協定」を結んだ。県外から市内の中古住宅に移住を計画し、改修費の補助金を活用すると金利が優遇される。ただ、今年の利用はなかった。

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同26日には移住促進パンフレット「鈴鹿暮らし」を5千部発刊。20―40代の若い世代を対象に雇用、子育て、暮らしに重点を置いた情報や移住者12人の体験談をまとめた。首都圏や関西・中京圏でイベント開催時に約2700部を配った。

移住促進ポータルサイトを現在作成中。同課では「子育て支援や相談などの情報を伝えるページのほか、空き屋バンクや住まいの支援制度の最新情報をタイムリーに掲載する」という。

伊藤実住宅政策課長は「課題は四日市や津市など近隣市との違いを明確にできないこと」と話し、「例えば鈴鹿サーキットは市を知ってもらうには入りやすいが、それだけでは移住・定住に結びつかない。鈴鹿を選んでもらうために何をアピールするべきか」と模索は続く。

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同市長太栄町の会社員粉川啓子さん(47)は同市に移住して3年目。四日市市出身で以前は東京や北海道に住んでいた。鈴鹿は初めてだが、事前の情報収集で地元の友人から勧められ、市への転入を決めたという。「ほどよい加減に何でもそろう。不便もあるが住みやすい町」とおおむね満足。「自動車があればもっと世界が広がる」と自動車を購入。ペーパードライバーを返上し、休日は運転の練習に励んでいる。