<地球の片肺を守る>COP24特集 貧困国から垣間見た国際会議の舞台裏

【コンゴ民主共和国政府代表団と筆者(中央手前)】

こんにちは!今回も先週に引き続きCOP24特集です。ただ今回は前回とは内容をガラッと変えて、決して日の当たることのない国際会議の舞台裏をお伝えさせていただきます。

今回COP24はポーランドの地方都市カトヴィツェ(人口約30万人)で開催されましたが、コンゴ民主共和国の政府代表団は会議に参加するために大変な苦労を強いられることとなりました。

先ずコンゴ政府代表団には「ビザの取得」が第一の壁として立ちはだかりました。それは大臣や次官であっても決して例外ではありません。困ったことにコンゴにはポーランド大使館がありませんでした。このため、隣国のアンゴラまで飛行機でビザ申請に行くことになりましたが、政府ではその費用すら捻出できません。仕方なく職員一人に数十のパスポートを持たせてアンゴラに派遣しましたが、何とビザが取れたのは国際会議も半ばに差し掛かった頃でした。

次の関門はポーランドまでの旅費の確保です。公務員の給与支払いすら滞りがちなコンゴ政府が一人数十万からの旅費を工面することは事実上不可能です。これについては、日本も含めた先進国や国際機関、環境保護団体が分担して資金援助しました。

最後が最難関のホテル確保です。COP24のため開催都市カトヴィツェのホテル状況は半年前から逼迫(ひっぱく)。ビザの関係で予約が遅れたアフリカからの参加者には、開催地から一時間以上もかかる隣町の安宿から通勤しなければならない者が続出しました。

こうしてコラムを書いている私自身ため息が漏れてしまうような話です。ただ、私はこのコラムで決して責任探しをしたい訳ではありません。全ての国が一堂に会して気候変動対策について議論することは、とにかく何もかもが大変だということをお伝えしたいのです。

ニュースでは国際交渉や大臣の演説など華々しい場面が報道されがちです。しかしその舞台裏では、開催国ポーランドはもとより、先進国、国際機関やNGOなどによる開催支援が「縁の下の力持ち」となって会議を成功させ、地球全体で気候変動対策に取り組んでいくための機運を醸成しています。

今回カトヴィツェに先乗りした私は、ビザが取れず遅れて到着するコンゴ人の同僚を駅や空港まで出迎えました。ポーランド人のボランティアに連れられた同僚を遠くに見つけて走り寄り、うれしさの余りボランティアに感謝の握手を求めると、彼女はわざわざ手袋を脱いで笑顔で握り返してくれました。

◇次回30日付以降、隔週で掲載します。

【略歴】おおなか・こうさく 昭和49年生まれ、伊勢市出身、三重高校卒。平成11年農林水産省林野庁入庁。北海道森林管理局、在ケニア大使館、マラウイ共和国環境・天然資源省、林野庁海外林業協力室などを経て、平成30年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザーとしてコンゴ民主共和国環境省に勤務。アフリカ勤務は3カ国8年目。