伊勢新聞

2018年12月14日(金)

▼厚生労働事務次官だったころの村木厚子さんに職業安定所の相談員が非常勤職員であることの感想を聞いたことがある。業務が増加一方の中で公務員増が悪とされる定数管理の現実があり、非常勤に依存するしかないとしながらも、あくまで定数増を求めていきたいとした上で、働き方を所管する官庁として「みんなが嫌だねえと思うような処遇はしたくない」

▼継続雇用の口実を与えないためにあの手この手の知恵を振り絞る県とはずいぶん違う気がしたものだが、大量雇い止めに踏み切ったシャープとは相通じるものがあるのかもしれない。県が直接聴取した雇い止め人数が750人で、報道されているのは3千人について「乖離がある。事実関係の確認に努める」

▼三重労働局の情報提供では3月、早々に聞き取り調査をし、7月に再度聞き取ったという話だったが、11月末の報道からすでに2週間、村上亘雇用経済部長は県議会常任委員会で「(雇い止めをされた労働者は)シャープが直接に雇用しておらず、実態が把握しにくい。県に調査権限があるわけでもない」。同社に調査を依頼するらしい

▼聞き取り後の対応が「十分ではなかった」として、鈴木英敬知事が対策チーム発足を明らかにしたのが1週間前。「実態把握に努める」と語ったこととの温度差も激しい。90億円の補助金についても「差し止め(理由)には当たらない」

▼血税などという言葉は知らないに違いない。確実に約束しても高額批判が出たら何だかんだと理屈をつけては撤回してしまう経済産業省の〝国民目線〟がうらやましくなる。