伊勢新聞

<地球の片肺を守る>COP24特集 岐路に立たされる気候変動政策

【熱気に包まれるCOP24開会セレモニー=12月2日、ポーランドで】

こんにちは! 今回はポーランドで開催中の気候変動に関する国際会議(COP24)の会場から、気候変動対策の厳しい現状について報告させていただきます。

早速ですが、読者の皆さんは、気候変動対策に取り組む上で最も大切なことは何だと思いますか。

それは「世界中の全ての国が協力し、地球全体で取り組みを進める」ことです。「何だそんなこと、分かりきった話じゃないか」といった声が聞こえてきそうです。しかしその「分かりきった話」がなかなか実現できてこなかったのが気候変動の世界なのです。

これまで、「気候変動対策は経済発展の妨げになる」との根強い考え方から、特に途上国側が気候変動対策に取り組むことに否定的でした。こうした中、四半世紀に及ぶ交渉の末、全ての国が気候変動対策に取り組んでいくことが合意されました。それが「パリ協定」なのです。

このパリ協定の開始を直前に控え、今度は政治レベルの大きなうねりが気候変動対策の前に大きく立ちはだかろうとしています。それは一国主義の台頭です。今から2年ほど前、トランプ大統領がアメリカ・ファーストのスローガンの下、パリ協定の離脱を宣言し、関係者は大きな挫折感を味わいました。

そして今回は世界最大の熱帯林アマゾンを抱え、途上国の立場から国際交渉をけん引してきたブラジルの政策転換です。何と、決まりかけていた来年の国際会議(COP25)の議長国を辞退すると申し出たのです。これも最近就任した大統領の政策と関連があるとのこと。

模範を示すべき世界の大国が自国最優先の政策を掲げ、気候変動対策をなおざりにしていることに私は頭を抱えました。なぜなら「地球の片肺」と呼ばれる熱帯林を有するコンゴ民主共和国は明日の生活すら保障されない世界最貧困国の一つだからです。

しかし、ここで言葉を失っていては政策アドバイザーとしては失格です。私は早速、上司である環境省次官に面会を申し入れ、気候変動対策に取り組む国際的な機運がこれ以上削がれないよう、COP24では国際社会に対して前向きなメッセージを力強く発信してほしい、そしてそのことが何よりもコンゴのためにもなるはずだと力説しました。

多忙の中、彼はメモを取りながら1時間以上も私と議論を尽くしてくれました。今回の国際会議でコンゴ政府代表は一体どのような発言を行うのでしょう。今、期待と不安が入り混じる気持ちで、その時を迎えようとしています。

◇次回は16日に掲載。

【略歴】おおなか・こうさく 昭和49年生まれ、伊勢市出身、三重高校卒。平成11年農林水産省林野庁入庁。北海道森林管理局、在ケニア大使館、マラウイ共和国環境・天然資源省、林野庁海外林業協力室などを経て、平成30年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザーとしてコンゴ民主共和国環境省に勤務。アフリカ勤務は3カ国8年目。