伊勢新聞

<まる見えリポート>外国籍児童、積極保護なく 四日市の女児遺体遺棄事件

【昨年8月、アユミちゃんの遺体が遺棄された箱が見つかった車=四日市南署で】

昨年8月、三重県四日市市大治田3丁目のアパート駐車場の車内で、ブラジル国籍のナガトシ・ビアンカ・アユミちゃん=当時(6つ)=が遺体を密閉した箱に入れられた状態で発見された事件。傷害致死と死体遺棄容疑で逮捕されたのは、アユミちゃんの母親と内縁関係にあったペルー国籍の男だった。改正入管難民法が成立し、今後外国人の受け入れ状況に大きな変化が予想される中、複雑な外国人犯罪を巡る一例として事件を振り返った。

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事件は平成29年8月29日、通報でアパートに駆けつけた四日市南署員が、車の中に積み込まれたプラスチック製の箱の中からアユミちゃんの遺体を発見。女性の入院先に現れた無職トクダ・バレロ・フェルナンド・ホセ被告(37)を死体遺棄容疑で緊急逮捕した。その後の調べで、トクダ被告が暴行によってアユミちゃんを死亡させていた疑いが強まったとして、同署は傷害致死容疑で再逮捕。津地検は死体遺棄と傷害致死の罪でトクダ被告を起訴した。

トクダ被告は日本人の父親、ペルー人の母親を持つ日系ペルー人で、14年にペルーから来日。アユミちゃんの母親とは28年9月ごろに知り合い、同居生活を始めたとみられる。

県児童相談センターなどによると、28年11月、アユミちゃんの姉に、母親から受けた体罰の痕が見つかり、北勢児童相談所に一時保護された。アユミちゃんは29年4月から姉と同じ鈴鹿市内の小学校に通学。姉の再保護を境に姿を見せなくなり、7月20日付で姉と共に除籍となった。

実際には6月中旬に母親やトクダ被告とともに四日市市のアパートに転居していたとみられ、転校の手続きはされていなかったとみられる。母親は7月、持病の妊娠への影響から入院することとなり、アユミちゃんはトクダ被告と2人で生活することになった。

津地裁で11月30日に始まったトクダ被告の裁判員裁判では、トクダ被告の暴行による傷害致死罪の成立が争点となった。今月5日の論告求刑公判で、検察側はトクダ被告が何らかの暴行を加えてアユミちゃんを死亡させたとして傷害致死罪の成立を主張し、懲役12年を求刑。対する弁護側は、アユミちゃんの死亡は階段からの転落事故が原因だったとして同罪の無罪を主張して結審した。判決は19日に言い渡される。

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県児童相談センターによると、県内5カ所の児童相談所に寄せられた児童虐待の相談件数は昨年度で1670件(前年同期比360件増)、うち外国籍とみられる件数は116件(同34件増)だった。

外国籍による相談への迅速な対応を図るため、同センターでは11月13日から、東京の民間事業者に委託して24時間多言語対応電話通訳を全国で初めて開始した。常時スペイン語やポルトガル語など6カ国語に対応し、可能な範囲で最大13カ国語に対応。11月末現在で、2件75分の利用実績があった。期間は来年3月29日までだが、担当は「可能な限り続けていきたい」と話す。

同センターでは、アユミちゃんの姉を一時保護した時点で、母親と交際していたトクダ被告の存在は把握していた。しかし面談や学校からの聞き取りの中で、アユミちゃんへの虐待を疑うような事実は確認されなかったため、積極的な介入には至らなかったという。

公判では、アユミちゃんの母親が補助金などの打ち切りを恐れて、入院中のアユミちゃんの世話を友人に頼んでいると行政機関に対して虚偽の報告をしていたことも明らかになった。

県児童相談センター児童相談強化支援室の村田善幸室長は「外国籍の子どもは義務教育が課せられておらず、公立の学校に入るかは親の判断次第。学校は子どもの家庭環境をモニタリングできる窓であり、そこから離れると問題を表面化させるのは難しい」と話す。

在留資格を新設し、外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が8日、参院本会議での可決に伴い成立した。今後受け入れ体制の過不足が大きな課題となることが予想される。

公益財団法人県国際交流財団の北村文明専務理事は「日本語教育の義務化など、生活に必要な仕組みや受け入れ対策の充実は必要不可欠」と話していた。