伊勢新聞

2018年12月9日(日)

▼三重県の大紀町に「ようこそ美人の町 大紀町錦」のモニュメントが立つ。旧紀勢町時代、役場で由来を聞いたら「何かキャッチフレーズをと考えて」

▼「美人」の基準は時代で変わり、主観でも異なる。単なる思いつきみたいな話におかしな気がしたが、スナックあたりで聞くと、美人の産地として昔から知られていたという。九鬼水軍に代表される海洋交易の地で、海外から女性を連れてきて、彫りの深い美人が多くなったという

▼朝鮮半島、中国沿岸を荒らした倭寇の拠点は瀬戸内海や紀伊半島で、志摩半島の複雑な入り江は水軍を割拠させた。陰流の祖愛洲移香斎にも海賊説がある。時は四半世紀ほど前まで下る。度会郡選出(当時)県議から東南アジアから嫁いできた女性を取材してくれと頼まれたことがある。嫁不足解消に東南アへの嫁探し運動をしており、成果は上がっているのという

▼外国人との交流に積極的県であるのかもしれない。外国人労働者数は2万4220人(平成29年10月現在)で過去最高。うち技能実習生は7509人で、10万人当たり数は全国3位だ。17年まで労働環境への申告・相談がほとんどなかったが、18年から増加。内容は割増賃金の不払いや最低賃金違反。裸電球の六畳一間の寮に多数の実習生が寝泊まりさせられているという報告もある

▼逃亡などの実態について、三重労働局に特に資料はない。県は、技能実習生の調査すらしていない。改正出入国管理法の成立で、外国人労働者はさらに増えるだろう。「取り組みができていなかった」は、シャープで最後に願いたい。