伊勢新聞

2018年12月6日(木)

▼千人なら許容範囲だが、3千人なら黙ってはいられないということだろう。シャープ亀山工場で日系外国人が雇い止めになったことで、鈴木英敬知事は県庁内に実態把握の対策チーム発足へ。「必ずしも」の前置き付きだが「(対応が)十分ではなかった」と認めたのも、2千人という大量誤差のせいか

▼おさらいをしてみよう。三重労働局からの情報で、県は今年の早い段階で雇い止めを把握していた。3月にはシャープから「500人削減計画」を聞き取り、7月に250人を聞き取ったが、11月末の報道では千人、12月の労働組合発表で3千人。県の聞き取り調査の信頼性が大きく揺らぐ

▼四日市公害以来、県は企業の説明にだまされ続けてきた。原因企業の一つ、石原産業とはその後二人三脚で県環境保全事業団を運営したが、フェロシルト事件では県リサイクル製品に認定した。三菱モンサント化成(当時)も昭和49年、猛毒PCBのドラム缶1200本以上を鈴鹿市の山林に投棄して汚染米を産出させ、無毒と言い続けた県は陳謝している

▼東洋ゴム、KYBの性能改ざんと対応は、問題に直面した企業の体質が変わりないことを示した。リーマン・ショック後の県内企業の日系外国人雇い止めは、今回以上にすさまじかった。故国へ戻る選択をした人らで教育現場も大混乱したが、県は緊急融資だけで有効な手は打たなかった。対策チーム発足は青年知事らしい誠実さで頼もしいが、目的が「実態把握」とだけ明らかにされているのはやや気合不足

▼いまこそ官民総ぐるみの県民会議を発足させてはどうか。