伊勢新聞

大観小観 2018年11月25日(日)

▼サイバーセキュリティー担当を兼務する桜田義孝五輪相が「パソコンを使ったことがない」と発言して国内外で話題になった。「教室に行ったが、忙しすぎて覚えるのはやめた」の答弁に議場失笑とか。さすがプログラミング教育が小学校の必修になる国の国会議員だ。頼もしい

▼コンピューターの業界紙記者時代の同僚に一昨年、30数年ぶりに再会したら、パソコンでメールとインターネットの検索機能を利用しているだけなのに「パソコンが使えるのか」と感心され大いに恐縮した。同僚は医療関係のアプリケーションソフト販売会社を経営しているという

▼昭和40―50年代在籍した業界紙にプログラミングができる記者はいなかった。ハードウエアを含めて入門書を2、3冊読んだあとは構造、機能とももっぱら耳学問。メーカーのマイクロコンピューターの組み立てキットを購入して未完成に終わった記者が一人いたが、のちコンピューター問題の評論家となり、著書は中公新書に収まっている

▼限られた専門家の領域だった当時のコンピューターと万人のツールとなった今のパソコンは同列には扱えないが、サイバーセキュリティーの講義、報道に接するたびにSFの世界に迷い込んだ気がする。パソコンが使えるかどうかの次元の話ではない

▼北川県政が電子県庁構想でパソコンを職員に配布したが、管理職クラスは「若いのがやればいい」と開こうともしなかった。大臣の資質はともかく、強まるサイバー攻撃の脅威と、パソコンの個人的使用とが同一に論じられるかの国会審議には失笑せざるを得ない。