三重交通(三重県津市)が、伊勢市の伊勢神宮外宮―内宮間を結ぶバス路線外宮内宮線に2つの車両をつなぐ「連節バス」の導入計画を進めている。県内初の試みで、いすゞ自動車と日野自動車が共同開発する国産初のハイブリッド連節バスを使用する予定。三重交通は再来年度からの運行開始を見込む。課題はルート選定。連節バスは全長が長いため、曲がりきれないとみられる交差点もあるからだ。
同社によると、外宮内宮線は多くの観光客が訪れる伊勢市で特に乗客が多い路線。平成29年度の乗客は約250万人で同社全体の乗客数の10・4%を占めた。内宮、外宮前の他、JR伊勢市駅や近鉄宇治山田、五十鈴川駅など利用者の多いバス停を通過する。
同路線では現在、1日8台の路線バスで運行しているが、定期便だけでは乗客を収容仕切れないため、4―6台を追加するのが年間を通じて常態化しており、2台同時運行もある。同社は連節バスの導入で客がバスを待つ時間の短縮や運転士の負担減などを期待している。
連節バスは、従来のバスよりも大量輸送を効率的に行えるのが利点。欧州では一般的だが、国内では車両の全長が長いなどの理由から限られた地域でしか走らせられないなどの規制があり、導入が進まなかった。
ただ、近年では岐阜市の岐阜バスが海外産の連節バスでJR岐阜駅から岐阜大、岐阜大病院までを結ぶ「清流ライナー」を運行するなど、国内の一部では導入が進んでいるという。
一方、三重交通が導入するのは、いすゞ自動車と日野自動車が共同開発する国産初のハイブリッド連節バス(全長18メートル、定員約120人)。詳細は明らかになっていないが、国内法に合わせた車両サイズとし、環境への配慮でハイブリッド車にする。両社は来年の市場投入を目指している。
三重交通は来年度の試走を経て再来年度に2両導入し、運行を開始する予定。維持や修理を考えると海外メーカー産は部品の納入が遅れることがあり、運行に支障を来たす恐れがあるため国産車の採用を決めた。
導入実現に向けた課題はルート選定。市内の交差点の中には観光バス(全長12メートル)がぎりぎり曲がりきれるくらいの広さの交差点もあるため、18メートルの連節バスでは曲がりきれない恐れがあるという。
例えば、市内のターミナルの一つ近鉄宇治山田駅の周辺にある岩渕交差点は、曲がるのが困難と予測される交差点。仮に曲がり切れない場合、宇治山田駅前のバス停に立ち寄れない可能性も出てくる。同社は国産連節バスの詳細が明らかになり次第、道路管理者の県などとルート選定に向けての協議を進める。
同社の高田和昭バス営業部長は「課題はあるが、客の利便性の向上などを考えると連節バスの導入が非常に有効と判断した。連節バスが伊勢市を訪れる人にとって新たな魅力となるようにしていきたい」と話している。