伊勢新聞

2018年11月3日(土)

▼「非常勤職員に関する書類はこれぐらいの高さになります」と県人事課の職員が机の上の一メートルほどを手で示したことがある。正規職員の勤務実態といかに違うか、従って処遇面に差があるのは当然という結論を導くために、有り余る知恵を振り絞っているということだろう。どこからでもいらっしゃいという気構えだ

▼昔は臨時職員、すなわち「臨職」と呼び習わしていた。地方公務員法の緊急、臨時の場合に採用できるという規定に基づくが、期間限定など、ほかの特別職対象が根拠の勤務形態との矛盾もあり、最近は「非常勤職員」が定着した。「実質常勤」なのに「非常勤」とはこれいかに、は自作のなぞなぞ。お粗末。非常勤の反対語として県だけに通用するのは「正規」である

▼地公法などの改正で、県は非常勤職員の規定を新たに設ける。これまでのほか、新たに一般会計年度任用職員を設け厳格化を図るというから、県の有り余る知恵の結集がますますいかされるか。改正法が明記した「期末手当の支給」は実現するようだ

▼「制度の趣旨に沿わない運用が見られ」と改正理由を総務省。実態は先行していたということだが、県はかたくなに支給してこなかった。地方自治法に手当の規定がないからだが、同法は「常勤」の職員は認めている。県は「非常勤職員」の名称にこだわったのだろう

▼名称はともかく実態が常勤なら手当は当然という判決は出ている。そう言ったら、県人事課はその自治体と県の勤務形態の違いをとうとうと話し出した。その部分に関しては有り余る知恵はくず紙同然となるのだろう。