2018年10月23日(火)

▼映画監督伊丹万作(1900―1946年)に自由映画人連盟から加盟の誘いがきたのは終戦直後。目的が「文化運動」とある。抽象的で気が進まないが、名前を使うことで役に立つならと返事をしたら、映画界の戦争責任者追放の提唱者に自分の名前があった。抗議し、除名を要請した

▼だまされた側の責任を問う『戦争責任者の問題』の中に出てくる話。みんながだまされたと言って、だましたと言う人がいない。非国民という非難の目で自分を見たのは軍人でも官吏でもなく、近所の商人や隣組長、町会長ら。今だまされたというのなら、だまされたことへの責任はないのか、という趣旨だ

▼だますものだけでなく、だまされるものがそろって戦争は起きる。だまされないために知識はもちろん、信念を強く鍛えねばならない。「不明を謝す」とはそれがないことを罪ととらえる考え方で、そういう人は同じ状況になれば何度でもだまされる。だまされる側の責任を問う自分が、戦争責任者を追及する側に加わってしまったのだ。自由映画人連盟にころりと〝だまされた〟

▼知識、信念を磨いてもだまされることから免れることが難しいのは情が絡むからだろう。感情、人情、真情、強情、愛情、欲情…人間らしさのすべてを含む。その振幅を刺激されると人はだまされる。積水化学も特殊詐欺被害者も変わらない

▼四日市の男性が1500万円被害。有料動画の未納金請求という手口はありきたりだが、舞台回しが〝弁護士〟というのも共通している。手口や請求内容の知識の指導で防げるのかどうか。当局は検証されたい。