伊勢新聞

2018年10月17日(水)

▼思わず背筋が寒くなった。県立高校から退学者2人、転学者1人の情報が、メールの誤送信によって生徒や保護者1500人に流出したという。学校は送信先に削除を依頼しているが、根絶に責任は持てるのだろうか

▼退学、転学が本人の私的事情や自由意思ならまだいい。我が子とその友人らに起こったのは遅刻などの学校のルールに端を発した担任教師とのトラブルのエスカレートだった。ルール違反した生徒に非があるのは確かだが、退学にまで発展したのは生徒側だけの問題といえるかどうか

▼教師が生徒たちをどう見たかは推察できる。県教育研修センターの心理相談窓口の項目をファックスで送ってきたからだ。教師の悩み相談が本務だが、お宅の子は一度行った方がいいのではないかという趣旨だ。教師の手に負えない問題児ということだろう

▼生徒が退学、転学するには、学校による処分から、いじめの最終的解決手段としてまで幅広い。学校、家庭の複雑な事情が絡むことも少なくない。教師から追い込まれたと感じる生徒もいるだろうが、そんな生徒にとって退学情報が学校の生徒、保護者に知られたと分かることでどれだけ傷つくか。我が家に起きた10数年前の〝大事件〟を振り返り、ぞっとするのである

▼流出させた教師は「大変な情報を誤って送ってしまった」と陳謝したというが、従来紙で伝えたこの手の情報を「メールの方が便利」と独断で送信した

▼メールの送信ミスは誰もが経験する。「大変な情報」ばかりの中に埋もれ、慎重さより便利さを優先する感覚に染まっていったのかもしれない。