伊勢新聞

<まる見えリポート>ゴルフと観光、初の商談会 外国人の取り込み狙う

【日本ゴルフツーリズムコンベンションで、海外の旅行会社に売り込む県内ゴルフ場関係者ら=志摩市阿児町神明で】

ゴルフ場関係者と海外の旅行会社との国内初の商談会「日本ゴルフツーリズムコンベンション」が今月、三重県志摩市の志摩観光ホテルで開かれた。人口減少と高齢化で会員が減り、全国的にゴルフ場が苦境に立たされる中、インバウンド(訪日外国人客)への期待が高まっている。県は商談会を誘致したことで国内のゴルフツーリズムで先頭を歩いていると自負するが、英語対応など課題は山積みだ。

全国でゴルフ場は昭和50年から一貫して増加していたが、平成16年の経産省の調査で初めて減少。同省の特定サービス産業動態統計調査によると、年間売上高は20年が約1023億円だったのに対し、29年には約921億円まで落ち込んでいる。

県内のゴルフ場も同様だ。県ゴルフ連盟に加盟するゴルフクラブは29年末時点で56施設で、21年末と比べ8施設減少。中部のゴルフ場会員権を販売する事業所の担当者は「会員の高齢化で、売り手の数が買い手を上回っている状態」と話す。

人口減社会でも経営を続けるため、県内の一部は外国人やビジターの取り込みにかじを切った。世界的には外国人プレーヤーの来場はよくあるが、会員制で安定的な収入を確保してきた日本のゴルフ場は世界市場から孤立し、まさに“ガラパゴス状態”だった。

そんな中、県は観光とゴルフを結びつけた「ゴルフツーリズム」を提唱し、協議会を設立した。多くの外国人プレーヤーを受け入れているタイのゴルフ場でノウハウを学び、国際的な商談会を誘致して県内のゴルフ場と海外の旅行会社とのつながりを作った。

県やゴルフ場関係者、海外の旅行会社がそろって目指す当面の目標は、2年後の東京五輪。海外のゴルフプレーヤーの中で日本への関心が高まる一方で、日本のゴルフ場の認知度は低い。五輪を機に、県内でのゴルフツーリズムが活発になることを狙う。

だが、課題は多い。商談会で主軸に置いた欧米の外国人旅行客は距離が遠く、頻繁には来られない。一生に一度の日本旅行で三重は観光地としての優先度が必ずしも高くない。めったに来られない地域の客はリピーターとしてあまり期待できない。

ソフト面での遅れもある。商談会前の視察で、参加した海外の旅行会社などからサービス案内の英語表記や、英語でのフロント対応が求められた。インターネット接続を可能とする公衆無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」の整備も必要になる。

また、減少したとはいえ安定的な収入を支える会員との折り合いもつける必要がある。「外国人プレーヤーはマナーが悪いという偏見が少なからずある」(業界関係者)。外国人客の取り込みでかえって固定客を逃さないかと尻込みするゴルフ場もみられる。

10年ほど前からインバウンドを経営戦略に入れている津市白山町のココパリゾートクラブは、外国人利用客の9割が韓国人と台湾人。アジアの富裕層への働き掛けにも積極的だ。同社は「会員と外国人利用者がバッティングしないよう調整している」という。

今後も人口減に伴って会員は減少する見込み。他業界では北海道のスキー場がオーストラリア人旅行客の取り込みに成功しており、インバウンドへの期待は大きい。県海外誘客課の担当者は「商談会で得た知見をもとに受け入れ環境を整えていきたい」と意気込む。その一方で「インバウンド対策は長期的な戦略が必要」(ゴルフ場関係者)と冷静に見る向きもあり、各ゴルフ場や県の次の一手に注目が集まる。