伊勢新聞

2018年10月11日(木)

▼質実剛健な北の湖に対し、高級車を乗り回して銀座で豪遊する輪島という対照的なキャラクターが大相撲「輪湖時代」を盛り上げたという。小学生の時の栃若時代から現在まで、変わらぬ大相撲ファンだが、唯一距離を置いたのが「輪湖時代」だったのは、柏鵬時代が終わった虚脱感のせいだが、そんな輪島のキャラクターも一因ではあった

▼のちの作詞家山口洋子が率いた銀座の高級クラブ「姫」が当時は一世を風靡し、二代目若乃花夫人も姫のナンバーワンホステスで、会ったのは独立後のせいか、地味でごく普通の女性という印象しかなかったが、若乃花に話が及ぶと明らかに目の光り、物腰が変わった。その献身的愛はホステスらの憧れで、相撲取りを彼氏にするのがはやり、輪島がそうだとするナンバーワンホステスもいた

▼そのホステスと、そのころ勤務していた雑誌社の上層部とどんな話があったかは知らないが、輪島の郷里石川県七尾市の和倉温泉の旅館紹介のため派遣され、系列の殺風景なユース・ホステルを宿泊所として用意されて、高級旅館を取材した。そのギャップと、憧れのスター力士らの裏面に触れた気がしたのとどちらが強かったか。無心にテレビの前に陣取る気が薄れた

▼後年輪島が年寄株を担保に入れ日本相撲協会を解雇された時は、さもありなんという気がしたのを思い出す。芦浜原発と珠洲原発のどちらが先か。同じ中部電力の原発計画で、珠洲が決まれば芦浜は遠のくとされ、能登半島先端の珠洲を取材し、七尾市を通った。飛行機名に似た源氏名のホステスを思い、輪島を思った。