伊勢新聞

<まる見えリポート>相次ぐ台風被害 暴風で記録的な大停電

【台風21号接近により停電となり、信号が消えた交差点で交通整理する警察官=9月4日、津市本町で】

8月から10月にかけて相次いで上陸した台風の影響で、三重県内では交通機関の乱れや停電などのトラブルが相次いだ。中部電力によると、9月4日に上陸した台風21号に伴う停電被害は中部5県(三重・愛知・岐阜・静岡・長野)の全エリア内で平成に入ってからでは過去最大となる約119万戸。県内だけで延べ約28万1700戸で停電となり、強風被害が目立った。

9月30日夜から10月1日未明にかけて通過した台風24号による全エリアでの停電被害は約85万戸で、こちらも平成では過去4位の被害件数となった。県内では延べ約9万500戸が被害を受け、台風通過後も住宅だけでなく交通機関、医療施設などで混乱が続いた。

同社では各台風の被害予想に応じて「点」や「面」での準備態勢を図り、復旧対応に当たったという。広報室担当者は「強風だけでなく、屋根などの飛来物や倒木などで被害が拡大した。物理的に原因を防ぐことは難しいので、復旧態勢や情報発信などの課題や反省点を今後に向けて検討したい」としている。

津地方気象台によると、9月末現在で今年は25個の台風が発生。うち7―9月にかけて5個の台風が日本に上陸している。過去30年の年間の平年値である25.6個と比較するとやや多いくらいだが、8月の発生数だけを見ると平年値5.6個を上回る9個で、過去2位の発生数という。特に8月12―16日には5日間連続で台風15―19号が発生していた。

背景には世界的規模の猛暑も影響しているとみられる。海面水温が平年より高いことでフィリピンの東海上で水蒸気が発生しやすくなり、インド洋から吹き込む強い季節風と東からの貿易風がぶつかり合うことで渦となり、熱帯低気圧が発生。偏西風に乗った熱帯低気圧は台風へと成長し、その一部が日本へと上陸したとみられる。

20号や21号、24号など一連の台風では県が暴風域に入り、雨による被害はもとより風による被害が大きく目立った。21号では尾鷲で最大瞬間風速45メートルを観測し、風にあおられたり飛散物に当たるなどして男性1人が死亡、30人近くが重軽傷を負い、家屋の倒壊や屋根の飛散、道路の通行止めなどが相次いだ。24号でも尾鷲で最大瞬間風速39.9メートルを観測し、6人が重軽傷を負った。

満潮の時期と重なることなどを理由に「伊勢湾台風に匹敵する記録的な高潮のおそれ」と事前に予報された台風24号だったが、結果的には進路が予想をそれたことなどが影響し、大きな被害には至らなかった。

桑名市防災危機管理課によると、高潮を想定して日進地区など浸水想定区域内の避難所4カ所を付近の小学校へ移し、それ以外の地域でも2階以上の建物では高所に避難するよう呼びかける措置をとった。同担当者は「事前の情報で避難しないといけないという意識が高まっていたこともあり、避難する人は多かったが目立った混乱はなかった」と話した。

県では本年度から、台風の接近状況などに応じて取るべき行動を時系列順にマニュアル化した「県版タイムライン」を作成。一連の台風でも、避難者の避難誘導などに一定の成果があったとしている。県災害対策課の梅川幸彦課長は「今年は発生や上陸数が多く、勢力も強いものが多い。これほど停電が多く発生したこともなかった」とし、「自分の命を自分で守れるよう、早め早めの情報を出して行動を促していきたい」と話していた。