伊勢新聞

2018年9月25日(火)

▼第三セクターの伊勢鉄道が、Jリーグ入りを目指すサッカーチームとのタイアップ企画に力を入れているとは意外だった。初の合同イベント自体は報道で見たが、公共交通機関の利用促進のためという額面通りに受け取らなかったのは申し訳なかった

▼本紙『まる見えリポート』によると、総務部次長が数年前から自主的に公式フェイスブックで試合情報を発信。昨年はピッチから鉄道利用を呼びかけたりしてタイアップにつなげた。利用者増に熱心な社員もいたのかと心強く、認識を新たにしたのである

▼伊勢鉄道の津市内沿線が散歩コースと重なるため乗客2、3人。時にはゼロの車両をよく見かける。踏み切りの遮断時間はJRより長く、乗客より待たせている車や通行人の方が多い。県、市町から10億円の支援を受けたばかりで、利用客増にも努めてはどうかと長い待ち時間のたびに思っていた

▼3年連続赤字を報告した昨年6月の株主総会で、石垣英一社長はあいさつで、前年度重大事故がなく、今後も安全輸送に取り組むと述べただけ。収益向上のビジョンどころか施策の一つも示さなかった。県も出資法人の評価で安全輸送を指摘し、赤字は特別損失のためと温かい

▼赤字脱却を報告した今年の総会でも、理由にあげたのは人件費と列車運休に伴う経費減に、JR快速「みえ」の利用者増で割戻金が上がったこと。3月の施設内での5歳児死亡事故に言及がなかったようなのは、接触列車がJRだからで、応分の責任もないということか。安全についての自己評価と県の審査が分かるのは、相当先になりそうだ。