伊勢新聞

<まる見えリポート>タイアップで収益源に サッカーチームと地域鉄道

【伊勢鉄道と鈴鹿市、鈴鹿アンリミテッドFCがコラボした伊勢鉄道バックヤードツアーに参加した親子連れら=15日、鈴鹿市内で】

Jリーグ入りを目指すサッカーチームと地域鉄道のタイアップ企画が三重県内各地で盛んに催されている。JクラブやJ加盟の前提となる百年構想クラブがない〝J空白県〟で、高まるサッカー熱を新たな収益源にしようと鉄道各社もイベントや企画切符の発売などに力を入れる。


県、鈴鹿市などが出資する第三セクターの伊勢鉄道(本社・鈴鹿市)は15日、同市を拠点にJリーグを目指す東海社会人リーグ所属の鈴鹿アンリミテッドFCのホーム最終戦に併せて、同チームなどと初の合同イベントを行った。

親子連れのサポーターら十数人が、鈴鹿駅から試合会場のAGF鈴鹿陸上競技場最寄り駅の玉垣駅まで選手と一緒に列車で移動し、玉垣駅に隣接する車庫を見学するバックヤードツアーに参加。車両の特徴について説明を受けたり、鉄道会社が用意した制服を着用して運転席で記念撮影するなど普段できない体験を楽しんだ。

鈴鹿市も参画し、公共交通機関の利用を呼びかける文章入りのうちわ、爪切りなどのグッズを参加者へのプレゼントとして提供。チーム側も選手1人を派遣するほかプレゼント用のポストカードを提供した。

チーム運営会社の鈴鹿スポプレアンリミテッドの吉田雅一さんは「相互PRの目的もあるが、地域貢献の意味もある。行政が出資する鉄道への協力が地元への恩返しになれば」とイベント参画の意義を語る。

Jリーグを目標に掲げる県内チームのうち、昨年から唯一JFL(日本サッカーリーグ)に参戦しているヴィアティン三重(桑名市)にとっては、地域鉄道を含む公共交通機関の活用はより切実なテーマだ。

全国リーグ昇格を機にホーム試合の観客動員目標を2000人に上方修正したが、県内のスタジアムは慢性的に駐車場が不足しており、公共交通機関の利用が不可避となるからだ。

このため、今季ホーム戦11試合を行う東員町陸上競技場への交通アクセスとなる三岐鉄道(本社・四日市市)とタイアップし、選手全員の顔写真入りオリジナル台紙付き乗車券を発行した。

同競技場最寄り駅の東員駅などに選手ユニホームを飾るなどして観戦ムードも演出した。同チーム広報担当の近藤大介さんは「SNSで話題になるなど反応も良かった。今後もこうした企画を通じて公共交通機関の利用を促したい」と話す。


伊勢鉄道総務部次長の冨澤康茂さんは、数年前から会社の公式フェイスブックを通じて鈴鹿アンリミテッドFCの試合情報を自主的に発信してきたという。昨年は試合の合間にピッチに立って、鉄道の利用を呼びかける程度だった交流が、今年、合同イベントを行うまでに深まり「SNSを通じてアピールしてきた甲斐があった」と喜ぶ。

伊勢鉄道と同じ旧国鉄転換型でサッカーとのつながりが深い鉄道会社といえばJ1鹿島アントラーズのファンにも親しまれている鹿島臨海鉄道(茨城)が有名だ。「上のカテゴリーに行けば行くほど広域公共機関の利用も増える。ファンを全国から鈴鹿に呼べるようなチームに育って欲しいし、そうなるよう応援していきたい」と話している。