伊勢新聞

2018年9月21日(金)

▼県教委の廣田恵子教育長が方針変更して障害者雇用率の水増し分の調査を平成28年度以前にさかのぼることについて「おそらく(調査済みの29、30年度分と)同じだと申し上げたが、軽い考えだったと猛省している」

▼何が軽く何が重いのか。鈴木英敬知事が所信表明で述べた「障害のある方々への背信行為であると言っても過言ではない」というほどの認識はないのだろう

▼28年度以前は退職者の聞き取りをしていないので「正確な値ではないと考えられる」「あくまで参考値」(県教委)。何を警戒してか、繰り返される予防線。あくまで軽くしようという考えがにじみ出ている

▼それでも「猛省」と言ったのは評価できようか。水増し発覚の時は「重く受け止め、深くお詫びする」という不祥事用定番の言葉。「前向きな姿勢で臨みたい」の発言と相まって、過ぎたことにいつまでもこだわっても仕方ないという態度だった。「猛省を」は越境入学の時、調査しないという県教委に向けて放った知事の怒りの一言。あの時廣田教育長は「まずは規則を守る仕組みを作った上」と〝前向き〟の方針を堅持したが、今回は若干の聞く耳を持ったのだろう

▼知事があんまり言うから仕方なく、という皮肉が「猛省」の言葉に込められているのかもしれない。あるいは、知事が言うことだから仕方なく、と渋々従う意思表明か。お役所仕事の打破は、やはり政治家に頼らざるを得ないということだろう。政治家が役所側に立つ姿は何度も見せられたが、議会はそれどころではないし、知事の常識への期待は高まる。