2018年9月8日(土)

▼四日市市東京事務所が東京で活躍する市出身者5、6人で座談会を開いたことがある。「駅に降り立つと独特の匂いがするでしょ。帰郷した気持ちになる」。みんなうなずき合った

▼三重県は大気汚染物質濃度とぜんそくの因果関係を否定し「四日市はぜんそく有症率が低い地域に入っている」と萩原量吉元県議らの問いに回答した

▼四日市公害は硫黄酸化物が主因だが、その後大気汚染の主役は窒素酸化物に。車の排ガスだ。議会から対策を求められた県が実施したのは四日市コンビナート企業への排出基準引き上げ。同企業担当者は「うちらが原因ではなく筋違いだが断れませんし。排出データは出しているから実績づくりをしやすいでしょうね」

▼県独自のサーベイランス(監視を伴う調査)要求には「予定はない。環境省に問い合わせて」。かつて国の環境行政を先導し環境先進県を自負した面影はない。黒煙を噴き出す工場地帯の初期の環境対策は煙突を高くし黒煙を広範囲に散らすこと。浄化装置の義務づけは四日市公害裁判後で硫黄酸化物をピンポイントで除去する

▼「臭いと思う日はよくあり、洗濯を干すのもためらうほど。(高い)工場の煙突から火が出ている時は臭いも強い気がする」は1年ほど前住み始めた知人。目がチカチカするという人も

▼四日市公害原因企業の石原産業のフェロシルト事件は37年後。不正発覚はさらに3年後。当初「時代も内容も違う」と関連に素っ気なかった野呂昭彦知事(当時)が「あきれるばかり。解体的出直しを」と言い出したのも3年後。教訓は今や忘却のかなたへ。