誰もが気軽に足を運べる結婚式場を運営する。そんな取り組みが三重県伊勢市で進んでいる。手掛けるのは、カップルごとに独自の結婚式をプロデュースする同市神田久志本町のウェザイン。自社の敷地内に「プライベート・ガーデン」を整備し、屋外ウェディングの挙式場として使うほか、花見やキャンプなどができる交流の場として開放する。ガーデンは10月末に完成する予定。東山迪也社長(31)は「結婚式場のイメージを変えたい」と張り切っている。
同社は新郎新婦の要望に応え、枠にはまらない斬新な発想でユニークな結婚式を企画するのが特徴。同市朝熊町の伊勢志摩スカイライン展望台での「山頂ウェディング」や農家の畑を使った「満腹ウェディング」など、屋外での挙式も手掛け「旅するウェディング」として人気を集めている。
東山さんは昨年3月、自社の結婚式場「FOLK FOLK(フォーク・フォーク)」を同市神田久志本町にオープン。今年8月末までに75組のカップルが式を挙げた。県外から訪れる人も多いという。式場名には、FOLK(人々)が集える場所にしたいという願いを込めている。
そのため、同社が目指すのは式を挙げた新郎新婦や結婚式とは直接関係のない住民らが何度も訪れたくなるような式場。気軽に足を運んでもらおうと、式場内にはコーヒースタンドを設置しており、カップルだけでなく、卒・花嫁(同社で式を挙げた女性)や幼い子を連れた母親、学生、会社員らも訪れる。
月に一度のペースで開く各種イベントにも力を注ぐ。いずれもプロの講師を招き、アクセサリー作りやヨガ教室などのワークショップ、東山さんと親交のあるプロ歌手のライブ、地域の飲食店などとコラボした食のイベントなどを開催。リピーターが付き、頻繁に参加する人もいるという。
「挙式後に新郎新婦との縁が切れてしまうのはさみしい」と語る東山さん。卒・花嫁の多くが「お世話になったスタッフに会いに行きたいが(用事がないと)結婚式場には入りにくい」と話すのを聞き、東山さんは「式場の敷居を低くしたい」と考えた。
プライベート・ガーデンの整備も開かれた結婚式場をつくる取り組みの一つ。式場に隣接する約2千平方メートルの空き地の半分に天然芝を張り、周囲に木製のフェンスと「FOLK FOLK GARDEN」の看板を設置する。屋外ウェディングの式場として使うほか、花見や夏祭りなどを開催し、住民交流の場として整備する。
告知を兼ね、東山さんはガーデン整備の資金を6月下旬から7月末日までの34日間、クラウドファンディングで募集。SNSで募集を告知すると瞬く間に寄付が始まり、初日で目標額の100万円を達成した。最終的に151人が220万6千円を寄付。寄付者の6割が卒・花嫁、花婿という。
「挙式後も新郎新婦と縁が途切れない式場を目指してきたので、多くの卒・花嫁たちに支持してもらえてうれしい」と東山さん。ガーデン完成後は、交流のある花屋や八百屋などに声を掛け、朝市の開催などを検討している。「一種のまちおこし。やりたいことはたくさんあるので、これからも結婚式を切り口に町を盛り上げていきたい」。