▼中央省庁のずさんな障害者雇用数水増しが膨らむ実態に、厚生労働省幹部は「うそだろ」と、事態がのみ込めなかったというから、官僚はこうだと決めつけることはできないが、水増しが千人を超え国税庁は「誤った解釈に基づき報告していた」
▼どう誤ったか。「原則として身体障害者手帳の等級が1~6級に該当する者」という厚労省の算入基準で「『原則として』だから原則以外もOK」と解釈したという。法務省はじめ財務、防衛省らも同じ。「原則」の言葉が無原則をはびこらせることへの疑問は感じないらしい。あいまいな指示をした厚労省がむしろ責められる奇っ怪な世界だ
▼国土交通省は「数が多いのは(職員)母数が多いことも理由」。「も」はたくさんの理由の一つとして使われる用語だが、それを強調することで理由はすべて「も」の事象と錯覚させる。代表的お役所用語と言えようか。「国家試験合格のハードル」をいまさらながら雇用の障壁のように挙げる。「国会答弁との整合性」のため文書を改ざんしたとした理屈と似ていなくもない
▼同じ制度の誤用でも、障害者政策の「谷間」を期せずして突いていると見えるのは糖尿病や内臓疾患、がん患者らを数えたケース。平成26年の障害者総合支援法で難病患者も福祉サービスの対象に加えられたが、障害者手帳の取得率は低く、障害者雇用率の対象かどうかはあいまい
▼指定された難病以外の患者が障害福祉サービスの対象とならないのはこれまで通り。法整備も含めて、垣根を取り払うきっかけとなるなら、誤った制度運用も悪くはない。