伊勢新聞

2018年7月26日(木)

▼鈴鹿市で25歳の男性が殺害された事件で「事実は小説より奇なり」という言葉が浮かんだのは、関係する人間関係のせいだろう。妻が20歳年上ということ自体は年の差婚が珍しくない時代で「奇なり」とするに当たらないが、息子の友人という設定が、世の母親を戸惑わせた。結婚に踏み切る際に息子のことをどう考えたのか、と

▼電話やメールで男性の様子に不信を抱いた妻が、連絡が取れなくなったとして息子に探すよう頼み、自宅の軽ワンボックス車内で男性の死体を発見したという経緯も不可解と言えば不可解。事実としても小説の筋書きにはなりにくいという意味で「奇なり」と言えるのではないか

▼発生から2カ月。事件は大きく動いた。妻とその交際相手という29歳の男性が死体遺棄の疑いで逮捕された。夫と息子の同世代の男性が関係者に加わった新たな展開に驚かされたが、男性容疑者の方は妻の経営するスナックの客で、殺された夫とも顔見知り。一緒に飲むこともあったという。警察は、容疑者2人の交際を巡るトラブルとみているというから、スナックのママを巡る人間関係という三文小説そのものの様相も帯びてきた

▼関係者はさらに増えそうだと観測する報道もある。一度で納まらず二度のひねりを効かせる最近のサスペンスドラマのように、さらなるどんでん返しが隠されているのか。死体を発見した息子を含め、同世代の男性3人の人生を大きく狂わせたには違いない事件だが、その中心にいたとみられる母の心情を表現するにふさわしい配役はだれかをちょっと考えてみたくなる。