2018年7月14日(土)

▼経済的理由で治療を中断するなどして手遅れとなって死亡したケースが平成29年中に5件で、調べた29都道府県中、4番目に多かった。県民主医療機関連合会(県民医連)の調べで、県内の加盟8病院・診療所を対象にした結果が統計学的にどうかは知らないが、中断の理由が「経済的に苦しい」「医療費の支払いが滞っていて受診しづらい」などだったというのはうなずける

▼健康談議になると盛り上がる年配者の集まりで、意見が一致するのは寝たきりで長期療養生活になるのは避けたい、ピンピンコロリすなわち病気に苦しむことなく元気に長生きし、コロリと死ぬことが理想―などだ。老後の備えに抜かりなさそうな人々がこうなのだから、経済的不安を抱える人ならどうなるか、およそ見当はつく

▼社会問題になっている子どもの貧困だが、それだけが切り離して存在するわけではない。親から子へ連綿と引き継がれてきた仕組みを無視し社会保障は今、ニワトリに偏重し過ぎたと卵へ重点を切り替えつつある。世間も「子どもに罪はない」と言うが、親や高齢者になると自己責任、自助努力とみなす

▼「保護なめんな」のジャンパーを着る自治体職員が現れる一方、生活保護の話をすると「受けたくない」と激高する病気無収入の高齢者がいる。社会保障費の自己負担増の中で、高齢者は居場所を見失っていく

▼最低限の生活保障である生活保護と、最低所得保障の自立支援が金額で融合していく。「県内全域で調べれば、数10倍にも上るだろう」という事務局の言葉は、近未来の不気味な予言ではある。