伊勢新聞

2018年7月4日(水)

▼老人ホームなど養介護施設で発生した高齢者虐待は前年度比3件減の4件。障害者福祉施設での障害者虐待は同1件減の3件―が平成28年度の県の調査結果。横ばい、減少傾向とも取れる楽観的観測が、時折表面化する虐待事件に粉砕される

▼津市一志町の障害者施設で明らかになったのは知的障害がある男女の被害者。先の障害者虐待調査をした県障がい福祉課は「知的障害のある人は自分の意思を表現するのが苦手で、暴れて表現することもある」とコメントしている。高齢者虐待施設も、特別養護老人ホームが3件。虐待は認知症や知的障害に集中する傾向だ

▼インターネット上に虐待を思わせる動画が掲載されているというのも、ことの是非は別にして、不安をかきたてる。掲載したのは元職員というが、いつぞや松阪市の施設で高齢者虐待が発覚したのも職員のネット掲載だった。もしネット掲載なかりせば、統計には表れない虐待の事実が埋もれてはいなかったか、という不安である

▼施設側によると、本人は動画で自分はこんな話し方、態度だったのと客観的に知り、ショックで「絶対改める」と涙したという。執拗に触り「エステしたろちゅうとんのやんか。このあごの肉を」などと毒づいた言動が動画で初めて気づくというのも信じがたいが、きれいごとでは務まらぬ、誤解を招きやすい仕事ではあるのかもしれない

▼「高齢者ケアから入ってくる介護士は言葉の心配りが未熟」と障害者団体代表が言っていた。施設代表は信頼回復に頑張るという本人の話に「嘘はないと確信した」。信じたくはある。