▼新聞の片隅の「富士通、三重の半導体工場売却へ」の記事にいささかの感慨があり。売却先は台湾半導体メーカー「UMC」。従業員は新会社に移り、生産体制は維持するというが、東芝、シャープのよう関心は県内にはない
▼同工場専用の多度工業用水廃止議案が県議会に上程されたのは一昨年2月。常任委員会で特に質疑もなく承認された。前年の常任委員会では、唯一のユーザーの操業廃止に伴い平成26年から休止状態と報告されたが、「生産体制維持」との食い違いについても、誰も聞かない
▼昭和58年に富士通誘致が決まった時は違った。県、地元も興奮気味で、競合他県を制したのは「この水なんです」と担当者が語った。高度な半導体素子シリコンウエハの開発研究所というのが当初の性格で、「この水」とは三重用水。しかし、途中からの割り込みであり、鈴鹿工業用水の日量2万数千トンから分けてもらうのが最良だが、相手のあること。旧多度町の上水道や新たな水源開発など、方々検討したが万策尽きたとする手続きを必要とした
▼四日市公害の後処理をほぼ終え、県は企業への厳しい締め付け施策を転換させた。県の部局から「公害」の名が消え、進出企業優遇制度を新設し適用した。企業立地課が活躍する時代でもある。次の北川県政は企業誘致を政策の前面に掲げた
▼成果であるシャープがやはり台湾企業へ、東芝メモリも日米韓企業連合に売却された。「雇用確保や事業拡大を力強く思う。引き続き成長、拡大、飛躍を」と鈴木英敬知事。外資でも国内資本でもという時代かもしれない。