伊勢新聞

2018年6月27日(水)

▼三重県教委が県立学校全70校を調査した結果、ブロック塀のある33校全てで構造基準を満たしていない可能性が出てきた。「地震発生前に気づくべきだった」と、鈴木英敬知事が至極当然のことを言っている。県民としてはもう一歩進めて、なぜ気づかなかったか知りたい

▼「これまでの法定点検では専門業者から構造基準を満たしていないという指摘はなかった」と、回りくどいことを言っている。死者を出した高槻市立小学校の場合は、専門業者が点検項目に入れていなかった。県もそうだったとして、だから専門業者のせいにするということか

▼建築基準法がほとんどザル法に等しいことは耐震偽装設計事件で明らかになった。建築確認した自治体は、偽装を見抜けるような体制にはないなどで、責任を免れたのである。民間検査機関への認定業務委譲も進んだ。「違反建築物であることを事故ではじめて知った」(高槻市立小)というのが、同法を巡る全国共通の現状。専門業者、専門家なるものが、そもそも心もとない世界なのである

▼一方、ブロック塀倒壊による死亡事故は繰り返されてきた。県を震度4の揺れで襲った阪神大震災でも多数の人命が失われたと見られている。県立美術館の陶壁を製作した伊賀の陶芸家は大阪で製造中の構造物が全倒壊し数億円の損害を被った。危険なブロック塀がなぜ放置されていたか

▼なぜというのは「他県と比べて多い」という廣田恵子県教育長の説明に対してもである。「子どもたちの安全が第一。なるべく早く撤去したい」の言葉に、いまごろという思いを込めつつ。