伊勢新聞

2018年6月8日(金)

▼政府が経済財政運営の指針「骨太方針」の原案に、外国人労働者の受け入れ拡大策を盛り込んだ。農業、建設など5分野を対象に来年4月、新たな在留資格を設けて50万人超の就業を目指す

▼「移民政策とは異なる」と方針は強調しているが、原則5年の滞在期間は試験の成績で撤廃され、今より一段とあいまいにはなる。にもかかわらず、教育や医療、労働法制の適用などの対応が進まないまま、人手不足解消策だけがこれまで以上に先行しかねない

▼県の外国人住民数は昨年12月末現在で前年比9・7%増の4万7665人。県内総人口に占める割合は2・6%で全国4位だ。かつて3位までいったがリーマン・ショック後の雇い止めで減少。教育現場などが大混乱したのは記憶に新しい。このところ4年連続の増加で、比率は急速に拡大しているが、県は外国人住民対策には目を向けないようにしてきた

▼鈴木英敬知事もほとんど語ることはないが、ブラジル訪問後に移民政策について聞かれ「これなかなか難しいところ」「非常に議論があるところ」「(議論の前に)今日本に居る人たちのことをもっとクリアに」「雇用を守ることとか、治安のことも」「議論は政府主導で」―あげく個人の考えは「いろいろありますから、やめておきましょうか」(平成25年12月)

▼平成21年、四日市市で起きた中国人技能研修生を巡る裁判で、法文を超えて研修生が労働者と認められ、法改正につながり、今の外国人技能実習制度となった。知事とは関係ないが、外国人労働行政は県主導ではあったのである。