Jリーグ規格を満たすサッカースタジアムを三重県内に整備する目的で県サッカー協会が昨年9月に発足した「スタジアム整備準備会議」の検討結果が注目されている。今年4月、鈴木英敬知事に提出した研究報告書の中で、J1基準を満たすスタジアムの有力な建設候補地に四日市市と菰野町の2カ所を挙げたことに加えて、J1昇格に向け「オール三重で応援できる県民クラブ」の創設の必要性に言及したからだ。県内では、アマチュア最高峰の日本フットボールリーグ(JFL)に所属する「ヴィアティン三重」(桑名市)、地域リーグの東海社会人リーグ一部に所属する「鈴鹿アンリミテッドFC」(鈴鹿市)、「FC伊勢志摩」(志摩市)の3チームがJリーグ入りを目標に活動中。夏ごろ立ち上がる県民会議で、これら既存チームも交えて〝オール三重〟のチームづくりについての話し合いも始まるが先行きは不透明だ。
(二反田恭子)
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「オール三重を強要される、もしくは何らかの嫌がらせ等を受けた場合には、最終的には我々から三重県を出て行くことも否定しません」。鈴鹿アンリミテッドFCは今季の東海社会人リーグが開幕した今月、公式HPに山岡竜二社長名で見解を載せた。
創設は3チーム中最も古い昭和55年。JFL昇格こそ果たせずにいるが天皇杯への出場は今年を含め3年連続。昨年は全国社会人選手権で県勢初優勝も果たした。
県内外で順調にファンを増やしてきたが、スタジアム整備準備会議の検討結果が報じられると様々な問い合わせがあったという。「オール三重でJ昇格を目指す」との報道から他チームとの合併消滅を心配するファンもいた。
山岡社長は「県でJ1をつくる運動は応援したいと思っているが鈴鹿のチームを育てるのはまた別の話」と説明し、「ライバルがなければ三重のサッカーも盛り上がらない」として、まず自チームの観客動員力拡大に力を入れるとする。
「目標となるスタジアム、チームを早く作ることが、既存チームも目標を描きやすくする」と話し、県サッカー協会などの方針に一定の理解を示すFC伊勢志摩の中田一三理事長も安易な合併には反対する。
中南勢地域からJリーグ入りを目標に掲げて平成25年から活動してきた。「(県民クラブ創設のために)既存チームがなくなることはありえない」として、「3チームどこかを無くすとか衰退するとか、どこかを強化するのではなく、すべてのチームが成長・発展する。それが高度な連携だ」と主張する。
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J昇格にはスタジアム整備だけでなくチームの強化も求められる。JFLも、J3に上がるには年間4位以上の成績が前提となるが、J2クラスの予算規模とされるFC今治(愛媛県)などの台頭で上位争いは年々し烈になっている。
昨年県勢として平成8年のコスモ石油以来JFLに参戦し、苦しみながら16チーム中12位で残留を決めたヴィアティン三重の後藤大介社長。全国リーグで戦う厳しさに直面し「〝オール三重〟については議論を重ねないといけない」としながら「チーム連携の必要性は感じている」と話す。
JクラブやJ加盟の前提となる百年構想クラブがない空白県では、J昇格を念頭に、地元サッカー協会を仲介役にJ入りを目指すクラブを一本化する動きが見られる。それぞれのチームが自由に切磋琢磨することで21年ぶりのJFL昇格を実現した三重で、気運を削ぐことなく〝オール三重〟の体勢につなげられるのか。協会の調整能力も問われる。