伊勢新聞

2018年5月17日(木)

▼旧聞に属するようで恐縮だが、鈴木英敬知事が津市に後援会をつくったのは唐突感があった。今ごろなぜ、というのは記者会見での問いでもあったようだが、知事は「政治家としては支援いただく基盤が広い方がいい」「たまたまこの時期」。そしてこうも付け加えた。「特段何か私の去就に関わることでどうこうということはない」

▼任期満了まで残り1年を切った。次期知事選はどうなるか。県民なら普通気になるところだが、そんな質問に、知事は「それはあなたが普通と思っているだけで、私は別に今どうこうということはない」

▼知事が「政治家」と「知事」の立場を使い分けるようになったのは昨年末の自民党訪中団に同行してからだろう。政治家としての活動を「政務」、知事としては「公務」と区別し、自身の行動の正当性として位置づけた。一昨年参院選で自民候補の応援のため「公務」の記者会見を中止し、批判が集中したことでひねり出した理屈かもしれない

▼「政務」と「公務」が切り分けられるものでないことは当時「観光誘客や県内経済の活性化につなげたい」と知事視察と変わらぬコメントをしていたことでも明らか。19日の日中平和友好条約締結40周年記念講演会開催などにつながったとも語っている

▼後援会がもっとも活動的だったのは県政で自民党と対決型だった田川亮三知事の2期までで、3期以降は後退した。「県民全員の知事」という考え方だが、鈴木知事の選択は別のようである。3選出馬や衆院転出などの臆測とともに、旧民進党との関係がそうさせているのに違いない。