2018年5月9日(水)

▼伊勢市の道路沿いの石灯籠を全て撤去する県などの方針に皇學館大准教授が「いかにも拙速」。地元の大学関係者にさえそう映っていることに驚く。県の包括外部監査人が撤去か許可か、早急に不法占有状態を解消すべきだと提言したのは平成25年2月だ

▼奉献目的で昭和30年12月、県道占用許可を受けて建立した団体は同39年に解散。以降、老朽化に伴い安全性の懸念が持たれるようになったと監査人は指摘し、許可時点で団体の法的性格や責任窓口を確認しておくべきであり、占有許可の切れる32年1月段階で許可継続か撤去の判断、行動がされず「時間だけが経過してしまった」ことが、禍根を今に、将来に残すことになったという意見だ

▼監査の3年前、建て替え事業を企画した社団法人に占有許可を与えながら、粉飾決算や違法リベートなどで解散命令を出すに至った事件にも触れているが、県の関わりは不明。当時の新聞は、市長のお墨付きで多額の寄付が集まったこと、「県から紹介を受けたので信頼した」という市の担当課長の談話などを掲載している

▼その後、県は「地方公共団体でなければ許可しない」という方針に一変した。複数申請はあるが裏社会との関係が懸念される団体もある。選別の難しさが背景にあり、県自身は、触らぬ神にたたりなしを決め込んでしまった

▼監査報告を受けて、鈴木英敬知事も手を打とうとせず、死亡事故後も「危険灯籠の撤去」。国と市との協議で一転、全撤去に踏み込んだ。「拙速」というより「怠慢」「放置」のあげくの「渡りに船」ではないか。