伊勢新聞

2018年4月22日(日)

▼入所者に「私はうそつきです」との趣旨のカードを首から掛けさせていたなどとして、姫路市が半年間の業務停止にした知的障害者施設が、処分を前に廃止届を出した。ぞっとする事件である

▼女性経営者の指示という。20代の女性入所者に対し、私物の携帯用音楽プレーヤーを取り上げ、時間内に食事を終えなければ食べさせなくていいと職員に指示した。カードは、注意してもうそを言って周囲に迷惑をかけるため。「本人の了解を得ていた」

▼障害福祉サービス会社に一部不心得な職員がいるというならともかく、不心得な経営者がいるというのでは救いがない。知的障害者雇用に積極的で、水戸市の地元で名士として尊敬されていた段ボール加工会社社長が、従業員に虐待を繰り返し、女性十数人に性的暴行をしていたことが発覚したのは平成7年。アカス事件といわれた

▼国の助成金を受けながら、従業員にほとんど賃金を支払っていないことから発覚。詐欺罪で逮捕された。足に角材を挟んで正座させて漬物石を乗せるなどの拷問も明るみに出て暴行罪でも起訴されたが、性的暴行は知的障害者の記憶があいまいという理由で不起訴となり、判決は猶予刑だった

▼女性3人が民事訴訟で勝訴したが行政、司法の無理解を白日にさらした。姫路市の障害福祉サービス会社設立は平成18年。知的障害者向け事業者指定は27年。虐待発覚は28年。事業所の廃止届が闇に葬ることにはならないか

▼虐待認定の伊賀市の施設で高校生の研修を継続させる県教委に、行政の変わらぬ無理解を感じてしまうのである。