伊勢新聞

2018年4月12日(木)

▼「首相案件」という言葉の響きが懐かしい。といっても、加計学園問題の話ではない。6期22年の長期県政後に「黒船来る」などと評された北川県政が誕生し、県庁内に実に多く、「知事案件」という言葉が飛び交った

▼前県政の「利権構造」の改革を訴え、対立候補の前副知事を応援する県庁を「集票マシン」と非難した。選挙結果で辞表を提出した職員はゼロ。〝戦犯論〟がささやかれ、信賞なき必罰の人事におののいていた。われこそは知事の腹心なり、を行動で示そうとする職員が現れるのも古今東西変わりない

▼知事の支持者が申請した福祉施設が規定通り1カ月で認可され「1カ月とはなあ」とうわさになった。規定通りなどそれまでになかったことで、自称腹心が「知事案件」として各部の担当者から必要事項を聴取し、手続きをしたという。確認したが、一言のもとに否定された

▼その後遠ざけられ、次期県政で復活。今度は自称腹心が裏目に出ることなく、人並み以上の県職員人生をまっとうするのだが、大の北川正恭氏嫌いに変心していた。「汚いことばかりさせやがって」と、つぶやいたのが耳に残っている。何のことかは不明。県信用保証協会が巨額の融資を保証した建設会社が、数カ月後に倒産したことがあった。やはり「保証は知事案件」という言葉が飛び交った

▼パソコン購入問題や元秘書の給与肩代わり問題で、北川元知事は「口利きとか、刑事的なことがあれば責任取ります」と語った。刑事責任を問われたわけではないが、全国紙などが「3選出馬」と報じた日、不出馬を表明した。