<まる見えリポート>センバツ高校野球・三重、準決勝へ 「守る野球」に攻撃力プラス

阪神甲子園球場で開催中の第90回記念選抜高校野球大会で三重高校(三重県松阪市久保町)が1日の準々決勝を突破し、ベスト4進出を決めた。大阪桐蔭高校に決勝で敗れ、全国2位となった平成26年夏の全国高校選手権以来4年ぶりの甲子園だったが、「自分が桐蔭を倒したい」と進学を決めた大阪府出身の定本拓真主将始め2学年で約百人の大所帯。ベテランから若手まで充実した指導体勢を背景に、全国優勝した昭和44年の41回大会以来49年ぶりのベスト4入りを実現した。

(運動部 二反田恭子)

今大会、参加36校中初戦が最も遅かった三重高校は、2回戦で日大三(東京)を8―0で下して初戦を突破すると、ベスト8入りを懸けた3回戦で乙訓高校(京都)に2ー1で競り勝った。2回戦では甲子園春夏通算3回の優勝を誇る日大三を相手に13安打の猛攻を見せた。

投げては2回戦で右上手投げの3年生、定本選手、3回戦で右横手投げの3年生、福田桃也選手がいずれも完投勝利。定本選手は強打で名を馳せた日大三打線を完封し、投打のバランスの良さを印象づけた。

平成26年夏の甲子園で準優勝した当時の監督だった中村好治さんは、昨年夏、決勝で津田学園高校に敗れた県大会の後、63歳で監督を退き、総監督に就いた。後を引き継いだのが現在の小島紳監督だ。

愛知・中京大中京高、三重大を経て同校教員となり、中村監督の下、副部長を務めていた28歳の新監督は、初采配にもかかわらず甲子園で積極的な攻撃を仕掛けた。2、3回戦とも犠打はゼロ。2回戦では5盗塁を仕掛け、得点に結びつけた。

総監督に就任した中村さんは、三重中京大(松阪市)監督当時、現楽天の則本昂大投手らを輩出した経験を活かして主にバッテリーの指導に当たった。上半身の急速な成長で投球フォームが崩れていた定本投手には、バランスを取る足の使い方を伝授。福田投手にもフォームの微調整を加え制球力向上につなげた。

小島監督は「中村総監督には『好きなようにやったら良い』と言ってもらえた」と話す。「中村総監督が目指して来たのは投手を中心とした守りのチーム。そこに足を使い、打ち勝つ野球の要素を加えた」。こうして投打のかみ合った現在のチームが誕生した。

海星高校元監督で、三重中京大がかつて所属していた東海地区大学野球連盟の市岡三年理事長は、大舞台でのびのびプレーする三重高校の選手らを見て「(中村総監督のような)経験豊かな指導者がいることが現場の安心感につながっている」とみる。準決勝の相手は優勝候補筆頭の大阪桐蔭高校に決まったが「(三重も)センバツ優勝当時のすきのないチームに近づいている」と話し、好試合を期待している。