伊勢新聞

2018年3月27日(火)

▼冬山登山講習中に高校生ら8人が雪崩で死亡した栃木県那須町の事故から1年。共同通信の都道府県教育委員会調査で、全ての高校で冬山登山を中止していた三重県教委は再開を検討。「雪山の経験が、夏山を含めた遭難や事故の危険を軽減する」という

▼そろそろほとぼりもさめてきたということか。人間の考えることにあまり違いはない。県教委が登山活動に理解があったということはむろんない。かつてK2登山隊に選抜された教職員の休暇申請を認めず退職に追い込んだ。私学に移り、同校山岳スキー部の強化に貢献した。指導者育成より服務規定が優先された

▼「天災」とされた惨事も、調査の進展とともに「人災」の側面が強調されるようになった。栃木県教委はじめ、教育委員会の中止判断に専門家の拙速批判はあり、登山部関係者にも少なくなかった。事情は県もそう違いはあるまい

▼緊縮財政の中で、鈴木英敬知事が「元気な三重を創り上げていく」ほとんど唯一の施策として取り組むのが「スポーツイヤー」。7月の全国高等学校総合体育大会、平成33年の「三重とこわか国体」に向けて、運動部関係者の声を聞く機会は増えているに違いない。越境入学に対する教職員のルール違反に対する処分より、現状をどう是認して規制緩和につなげるかに知恵を絞られた形跡を見ても、そのことはうかがえる

▼昭和50年国体は天皇杯を目指して県職員、教職員に「国体枠」での大量採用を進め、人事行政に長く爪痕を残した。教育行政に、時の政権の施策がストレートに反映されて、いいはずはあるまい。